NO.9-18 三和わらび様 「夏の牧場」

【募集テーマ】

 Thema:「青春」もしくは「爽やか」

 企画募集日:2019.10.1


【作品名】

「夏の牧場」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891175663


【作品概要】


 夏休みに、「僕」が電車の旅に出て、白いワンピースを着た同い年くらいの絵描きと出会うお話。


【感想】

 率直にこの作品は、雰囲気は好ましいものの物足りなさが際立つ内容でした。例えていうならば、出汁も取らず、味噌も少ししか入れていないお味噌汁を飲んでいるような感覚です。具は入っていますし、味噌の味も多少しますが、これは味噌汁ではなく、を飲んでいるだけです。いえ、失礼。少々分かりにくいたとえだったかもしれませんね。

 何を申したいのかと言いますと、これは話の大枠だけを書いているにすぎません。最初から最後まで作者様がやりたいと思っているお話の形はできていますが、「物語を楽しむ」と言うのはただそのだけを読むものではないと企画者は思うのです。

 物語は情景描写、登場人物たちの動き、感情や表情の移り変わりなどを文字で表現するわけですが、この作品にはそれらが本当に最低限しか与えられていない為、読者は「きっとこううだろうな」と想像するしかありません。もし、これについて作者様が「想像力が掻き立てられるお話にしたのだ」と仰るのでしたら、それは単なる言い訳に過ぎません。真に「想像力が掻き立てられる」作品というのは、文字で書かれたものが頭の中で、まるで実感できるようなものを指すと企画者は考えます。

 それから、この作品にはいくつか小さな矛盾や不自然な流れを感じるところがありました。その中で特に気になったものを二つ挙げます。

 一つ目は始まりの場面で、「僕」が電車を乗り換えた場面です。「僕」には確か計画がなかったはずですが、何故かとある田舎駅で気動車に乗り換えています。「僕」は本来、その気動車に乗る理由がなかったはずです。もし気動車に乗る理由が電車に乗っている最中に生まれたのだとしたらそうであるならば、どうしてそれに乗ろうと思ったのかということを書く必要があったのではないかと愚考します。

 二つ目に、少女と出会った場面です。

 まず、なぜ自分と同じぐらいの少女は相席を求めたのでしょうか。他の席は埋まっていましたか。それとも空いていたのに、あえて「僕」のところに来たのでしょうか。また、どうして同じぐらいの年なのに、少女は敬語で話し、「僕」はため口なのでしょうか。さらに、何故二人は名前を聞かなかったのでしょうか。少女は「僕」に目的地まで一緒に行こうと誘っているにも関わらず、何故それが気にならなかったのでしょうか。


 全体的に、作者様はこの作品を書く際に「こういうお話を書きたい」というぼんやりとしたイメージがあるようですが、それがはっきりと見えていないのではないかと思います。

 もし、作者様自身のイメージがはっきりとしているのだと仰るのであれば、言葉による描写力が不足している、もしくはこの作品の中でそういった表現をすることを諦めたのだと企画者は解釈致します。


 以上。

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