NO.8-14 カネサダ様 魔王の理論

【募集テーマ】

 Thema:「王」

 企画募集日:2019.9.21


【作品名】

「魔王の理論」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890833096


【作品概要】


 葉山優斗を含む、3人の日本人が、異世界へ転移する話。


【感想】

 この作品は、昨今よく聞かれる、主人公が異世界転移するところからお話が始まっていきます。ただ「昨今」とは言うものの、異世界転移や転生の話は、最近生まれたわけではなく、昔から物語の構造としてあった話ですが、近頃は目に見えて多いと感じます。それ故に、作者様ごとの特色が出た作品を生み出すのが、難しいのかもしれないと感じます。

 さて、ファンタジーはそれなりに好きなジャンルなので、普段でも読んだりするのですが、似通ったものがあるからこそ大きく3つのことをクリアしていた場合にのみ読み進めております。


 1つ目は、作品にオリジナリティがあるかどうか。

 2つ目は、ファンタジーという、作者様がその世界観を全て作ってしまえる中で、いかに自然な世界観を実現できているか。

 3つ目は、作者様のやりやすい方向に、お話作りが向いていないか。


 この3つの点です。


 1つ目のオリジナリティのことですが、全てを見たこともないようなものにせよ、と言うことではございません。お話を作る時は、必ずと言っていいほど、作者様の経験や調べた事柄、今まで見てきた物語が反映されていきます。それ故に、どことなく「ここがあの物語と似ている」となることもありますが、その中でも作者様の色や特徴を出すことが必要だと思います。

 この作品はどうでしょうか。オリジナリティがあるでしょうか。


 2つ目と3つ目ですが、これはファンタジーだからこそ必要なことです。ファンタジーというと、作るのが簡単だと思っていらっしゃる方がおられますが、実は0から全てをご自身で作らなければいけないので、より精度の高いものにしようとすると、意外と大変です。

 そしてその影響から、3つ目のところで甘さが出てくる所があります。

 実際、この作品では3人の日本人が異世界に召喚されていますが、何故日本人なのでしょうか。魔王になる候補を異世界から呼び寄せるのであれば、どこの人間でも良いでしょう。アメリカ人でも、中国人でも、インド人でもいいわけです。もし、日本人を召喚させるしかなかったというのであれば、さらに条件を絞らなければなりません。例えば、魔王トモエが掛けられる魔法の範囲が狭かったとか、彼女が元々日本人だったから同じ地の人間を呼び寄せた、と言う風にする必要があるでしょう。

 また、優斗が高校生で一人暮らしというのも、その後の異世界へ転移したときに、親に心配されなくていいからそうしたのではないか、と思ってしまいます。確かに、高校生の一人暮らしは全くないわけではありませんが、そう簡単なことではないでしょう。掃除洗濯、家事や買い物を全て一人でこなし、何かトラブルや困ったことがあっても、頼れる大人がいなければそれも一人で解決しなければなりません。それに、金銭問題はどうでしょうか。確かに、ご両親が海外から仕送りをしてくれるのかもしれませんが、アパートに住んでいると言うことはそれほどお金に余裕があるわけではないと推察します。では、何故両親と別々の生活をする必要があるのでしょうか。最近の治安のことを踏まえたら、せめてご両親の実家に預けるというのが自然な流れであると思います。作者様は、「両親の子育てに対する哲学がある」と仰っていますが、企画主は賛同しかねますし、やはりこの部分はお話を進めるうえでの設定であると感じざるを得ません。

 それから、魔王トモエは説明する暇がないと言っている割に、大変長い時間その世界の説明をして下さってますね。このように時折、登場人物が前後で違ったことを言っていたり、質問に対する答えがなかったりするので、読み直してみるのが良いかと思います。


 全体としてこの作品は、状況の説明にはある程度力が入っているのですが、人の心の機微が大雑把であると感じます。深みのあるファンタジーにするのであれば、より登場人物たちの心に寄り添った書き方をしなければならないのではないか、と愚考致します。


 最後に、「序章 虐殺前夜」が気になります。気になると言うのは、悪い意味です。この場面に対して、作者様なりにきちんとしたお考えがあることを願います。


 以上。

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