NO.4-11 偽教授様 「針一筋」

【募集テーマ】

 Thema:「男の生きざま」もしくは「女の生きざま」

 企画募集日:2019.9.16


【作品名】

「針一筋」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884415906


【作品概要】


 「針打ち玄達」と呼ばれた、忍びのお話。


【感想】

 まず、この作品の出だしを読んで、作者様は企画主を試しているのではないかと思いました。その理由は、企画主が「正直な感想を申し上げます」と言っておきながら、感想と言うよりもそれ以前のことを書いてしまっている、という自覚があるからでございます。何故、そうなってしまっているのかというのは、いつか別の所で申し上げるとして、それ故にこの作品を読んだ瞬間、しっかりと時代背景に合わせた文章や言葉が使われ、さらに作品そのものが多くの方に評価されているのを見て、作者様は企画主を試していらっしゃる、などと阿呆なことを考えたのでございます。

 しかし、この作品を読み始めていく内に、「ああ、面白い作品を面白いと言う企画でもあったな」ということをようやく思い出しました。


 前置きは長くなりましたが、「針一筋」は面白い作品でした。企画主は今回のテーマを「男の生きざま」もしくは「女の生きざま」としたわけですが、できたらこういう作風に巡り合えたらなと思っておりました。

 「針一筋」で登場する「玄達」という人は男ですので、「男の生きざま」に当てはまるわけですが、「玄達」の生きざまに対する作者様の独自の解釈が中々に面白くございます。

 戦国の世において、玄達は「針」を使った殺人ができる忍びですが、彼は戦いにおいて優劣をつけると言うよりも、その技を誰かに認めて欲しいと言う欲求の方が勝っておりました。何故なら「針」という特殊な道具を用いて殺人をするからこそ、誰にもそのすごさを分かってもらえぬのです。刀であれば、弓であれば、槍であれば、武術を習う過程で誰かしらと競い合うことがありますが、玄達はたった一人「針」という道具を用いてその技を磨いていたのです。それ故に、誰にその技の難しさなどが分かりましょうか。分かるはずもございません。その為、玄達が最期に求めたものが、彼らしいものだったと感じました。

 人々は多くの場合、「できること」を隠そうとはしません。だからこそ、「自慢」という言葉もあるのでしょう。時には自慢話ばかりをしたり、大したことないことでも凄いことのように振舞われると嫌悪を抱く方もおられることでしょう。しかし、「自慢」そのものが悪いわけではございません。何故なら人は、人に認められたり、必要とされるからこそ、自分の存在意義を持っていられるところがあると思うからです。そして「自慢」というのは、他者との比較ができるからこそするものでございます。

 しかし、玄達のその技は誰かと比較できるものではございません。何故なら彼が極めた技は、たった一人のもので、それを比べる人がいない為、上も下もないのです。

 作者様が作品紹介の所で「天才の本質って、孤独なんじゃあないでしょうか」と書かれておられましたが、「針一筋」を読ませて頂き、その考えに成程と思いました。

 また、彼が「針」以外の能力について、人並みであったり、人よりも劣っていたするところに好感を持てます。天才だからといって、何でもできる人間など然々いるものではありませんし、足りないものや欠点があるからこそ、彼が「針」に対する執着がどれほどのものか際立って見えました。


 しかし、この作品にはまだ課題があると感じます。

 一つは、玄達が針を打つ具体的な瞬間が描かれていないことです。彼がはじめ針を使って蠅を射止めたときも、「打った」としか書かれてありません。それ故に、玄達が針の孔に髪の毛を通して打ったとき、ただ良くなったことだけを書かれていて、今までとどう違ったのか、読者は得られた結果から過去を推測するしかできない状態です。

 また、扇に針を刺して止めるところも、彼の見せ場であるはずなのに、留まることなく流れて行ってしまっています。それからその時の周りの状況はどうでしょうか。重要な人物たちの顔色は窺えても、周囲がどう思ったのか分かりません。それ故に、これが特別なことなのか、そうでないのかがはっきりしないのです。


 他にも気になる点はございましたが、それでも文章は読みやすく好印象でした。中にはWeb小説らしく、行間を空けて欲しいと言われる方もいらっしゃるのかもしれませんが、作者様くらいの文章力であれば、そんなことをする必要はないと企画主は考えます。勿論、1話に1万字も詰め込まれたら、たとえ良い文章でもげっそり致しますが、「針一筋」くらいの塩梅であれば読者は苦にならないと思います。


 それでは、最後に一言。

 中々に、興味がそそられる作品でございました。


 以上。

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