カルテNo.4 仕事ばっかりの日々では疲れてしまう

そう言ってオペ室の前にやってきたのはワタル先生。どうやら、あのライオンの青年について知っている様だ。私は彼が何者なのかを知りたくてワタル先生に質問する。


「彼はいったい誰なんですか?どうしてミラージュ・ファミリーと戦うのですか?」


「……」


ワタル先生は何か迷った顔をしているのは分かる。恐らくだけどライオンの青年については何か知っている。だけど何も答えないのは彼には何かしらの秘密があるんだと思う。


「コレは当の本人に硬く口止めされているから、決して口外はしないでほしい。この事を知っているのは一部の病院関係者と僕だけなんだ。恐らくオペが終われば正体が分かる。」


「え?それはいったいどういう事です?」


「彼についてだ。彼はかつて人間と魔人との大戦によって大切なお姉さんを失ってしまった。彼は早くにお父さん、お母さんを亡くしてしまい肉親はお姉さんただ1人だけ。だが、彼の家は騎士の貴族の為、幼い彼には家督を継ぐには荷が重く、まだ若いが実力のあるお姉さんが家督を継いだ。」


「……」


「だけど事なくして人間側と魔人側での戦争が勃発するという時、騎士の家系である彼のお姉さんが招集された。そして、先の大戦は始まってしまいお姉さんも先陣を切って戦争で功績を上げていった。その功績から付けられたアダ名が【制空のヴァルキリー(戦乙女)と呼ばれたんだ。」


確か、スカル・レイもライオンの青年に対して【制空のヴァルキリー(戦乙女)】っていう言葉を口にした瞬間に今までにないくらいに激昂してたわね。確かに唯一の肉親を敵であるミラージュ・ファミリーの口から言われると激昂するのも納得だわ。


「だけど、大戦の終了間際で彼女は殉職してしまった。」


「どうしてですか?」


「人間側の味方が魔人側に人質に取られてしまい、それは敵の罠だと人間側は知っていたので、人間側は人質に取られた子を助けにいかない方針だった。しかし、彼女だけは違った。」


「仲間を見捨てられなかったのですか?」


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