カルテNo.3 どの世界でも生きるには働かなくちゃ
私は師匠からの『もう立派な1人前だよ。』って言われた事に自信が持てるようになって、治療だけじゃなくて他の事務仕事関係や法律、保険組合について色々と勉強していくと、いつか自分でも接骨院を開業したいって思うようになった。
師匠に自分でも接骨院を開業したいとの旨を伝えた時に師匠は少し寂しそうな顔をしていたが笑顔で『やれるだけやってみろ。』って言われて師匠は私の背中を押してくれたのを覚えている。
そう思い出しながら午後の診療まで少し時間があるので私は自動販売機でコインを入れて缶コーヒーの無糖ブラック買い缶を開けて飲む。
すると私の目の前に白衣を着た若そうな男の子が私をジィーっと見てくるのが分かる。何処かで見た事はあるんだけど誰だったかしら?
「あっ、お団子頭。」
「あの時の!」
私は『お団子頭』って言う言葉で思い出す。私にぶつかっておいて謝りもしなかった嫌な男。
「失礼ね!私はお団子頭って名前じゃない!日野桃香よ。」
「日野桃香?アンタが外傷科で新しく雇った人なんだ。」
「えぇ、そうだけど。なによ?」
「いや、俺の担当医のワタル・クラーノ先生がやけに、アンタの事を推しててな。」
「そうなの?」
「診療後のミーティングに色んな先生をかき集めてはアンタの技術をベタ褒め。治癒魔法も使わない、精霊術といったものも使わない。自分の手だけで治療していく技術は治療範囲に限りがあるけど、その技術こそ間違いなく健康寿命は伸びるって言ってたな。」
「それよりアンタ。見かけない顔なんだけどさ、何処から来たの?」
「え?!まぁ……」
どうしよう。本当にどうしよう。何処から来たの?って聞かれると素直に答えづらいわ……
だって『異世界からやってきたの。』なんて言えないし『30歳処女。魔法使いです★(キラッ)』なんて口が裂けても言えないよ……
「まぁ、答えたくないなら無理に答えなくても良いけどさ。」
「え?ちょっ……」
「良いよ、人間誰しも話したくなかったり語りたくないものはあるからさ。」
「ありがとう。でも、あなたの名前だけでも、教えてもらえる?」
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