カルテNo.2 三十路女。接骨院を開くまでの道のり。

「まぁ、簡単に言えば骨折、脱臼、捻挫、肉離れ、打撲といった外傷と呼ばれるケガを治す人のことよ。」


「え?じゃあ、医者とは違うの?」


「そうね〜ドクターって言うのはオペをしたり診断が出来たり薬を出したり出来るけど、私達はそれが出来ないのよ。ドクターの出来る範囲がこの部屋くらいだとしたら私達はクマ吉が寝そべっている机くらいの範囲かしら。」


「結構、範囲が狭いのね。」


「そうね。だけど骨や筋肉に関して言えば私は医者よりも治療技術が優れていると自負してるわ。」


「どんな治療技術なの?」


「この自分の手よ。」


私は自分の手を自分の顔の手前まで上げて続けて言う。


「この技術が先人の知恵を絞り出してオペをしない技術。つまり整復(せいふく)や手技治療という技術と固定で骨折、脱臼、捻挫、肉離れ、打撲という名の外傷を自己治癒力を高めて治してきたのよ。」


「なるほどね〜。他には何が出来るの?」


「簡単に言えばケガや痛みの予防や手術後の身体の機能回復訓練とかかしら。そうする事で後遺症も少なく早期に日常生活が送れるようになるって言うのがメリットよ。」


「うーん。確かに病院の現状を聞くと骨折や脱臼は手術してからのリハビリに時間が掛かってしまったり、捻挫や肉離れの患者さんが多いから何かと病院は人手不足だって話。」


クマ吉は寝そべっていた状態から起き上がり神妙な面持ちを見せながら腕を組み考え事を始める。


「何か問題ある?」


「いや、問題はないよ。分かった。こちらとしても桃香っちを俺っち達の都合で巻き込んでしまったから桃香っちの願いを叶えなくちゃいけないからさ。」


「ただし私からもう1つ条件がある。」


「ん?」


「接骨院を立てる際の機材や備品、そして消耗品及び経費はそっち持ちで。あと、私とキャビンの衣食住の確保もね。」


「……それってだいたい幾らくらい?」


「さあ?」


「そうですねぇ。確か桃香様の居た世界が円になります。そしてこの魔法世界においてはマルクになりますので……」

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