カルテNo.2 三十路女。接骨院を開くまでの道のり。

「ねぇ。お嬢ちゃん。その右手診せてもらえる?」


「貴女は?」


「えぇ、まぁなんていうか。恐らくですがお母さん。娘さんは肘が抜けて右腕が動かなくなったんじゃないかって思いまして。」


「肘が抜けた?そんな感じはしなかったんですが?」


恐らくだけどお母さんの方は無意識だったのもある肘が抜けるって事は脱臼しているという事。子供の骨はまだ成長段階の為、柔らかく、骨の形状も出来上がってない。それにそれを繋ぎとめている靭帯(じんたい)と呼ばれる関節の留め具も緩い。


「お母さん。少し私に診せて頂いても良いですか?」


「え?あっ、はい。」


私は女の子の目線に合わせるようにしゃがみ込み。女の子は今にもまた泣き出しそうに涙目になっているけど、早く治してあげなくちゃだね。


「お母さん。避難している途中に転んだりはしてないです?」


「はい。転んだりはしなかったです。」


「分かりました。」


そう言った後に私は頭を診たけど異常はなさそう。至って転んだ形跡もない。次に私は女の子の脇を抱えて持ち上げる。肘の脱臼つまり【肘内障(ちゅうないしょう)】と【鎖骨骨折】を見極める為。


小さい子は痛くてあんまり会話やコミュニケーションが上手く取れない事が多いから、触診で痛がって泣けばそこに症状があると思えば良い。


女の子の脇を抱えて持ち上げたが女の子は痛がる様子も泣く様子もないので鎖骨の骨折は無いと判断する。そして疑うとするなら肘内障になるね。


「お嬢ちゃん。両手診せてもらえるかな?」


「ん……ぐすん。」


女の子は両手を出して私はまず、痛くない方の手である左腕から動きの確認していく。両方診ていく事で動きの確認や腫れ、内出血などを確認する為で、痛くない方から診ていくのが鉄則。


私は左肘の曲げ伸ばしと腕の外開きと内開きの動きを確認する。うん。左肘は至って正常で何も問題ない。


次に女の子の痛い方の右腕を慎重に確認していくと右腕肘の外開きをしようとすると、女の子が身体でそれを逃げようとする動作が確認出来る。し痛いのか今にも泣きそうだ。


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