第80話

「そういえばさ、裕也」

「何?夏樹」


あれから、結構経ち、時期はもう完全に冬となった12月中旬。窓を開けるのもかなり躊躇われるほど外は冷たい風が吹いていた。


「お前って、もうデートとかしたのか?」

「え......?」


そういえば、そうだ。


付き合ってから、デートなんてしていない。していたことと言えば......イチャイチャすることと、四六時中一緒にいることと、あと......あれ?あれ?


なんか、あんまり変わっていないような。……イチャイチャのレベルが格段に上がっただけで。


「その顔だと、していないみたいだな」

「うっ。そうだけど。夏樹は?」

「俺は、結構しているぞ」

「ふーん、そうなんだ」

「裕也と違って、ちゃんと公衆に配慮していちゃついてもいる」

「ごめんって。最近は治ったでしょ」

「とはいってもなぁ」


そう、最近は治った。約束したから。


でも......こちら側、特に僕がすごくつらい。だって......



『ゆう君!!』


昼休みが始まって、すぐに僕のクラスに来る麗華。そのまま、僕に抱き着き、キスをしようと、するけど寸前で思いとどまり、しゅんっとする。悲しそうなオーラがあふれ出ている。もう泣きそうな感じだった。「うぅ......。うぅぅぅ」とうめき声をあげて、こっちを見てきて、「つらいよぉ。したいよぉ」と訴えてきていた。



その他にも二人で昼休みにいるときのことだ。


「えへへ、ゆう君。ゆうくーん」嬉しそうに僕の上に座っている麗華。


「ゆう君の髪の毛はサラサラだね。それにいい匂いだぁ」と少し酔ったような口調で僕の髪を触る。


「麗華もいつもいい匂いだよ。髪もきれいだし。......僕のためにきれいにしてくれてるのかな?」

「えへへ、そうだよぉ。もっと、触って。触ってくれないと嫌。それにもっと褒めて」


向きを変えて、そうねだってくる麗華。


「ありがと、麗華。僕のために。......でもこれ以上可愛くなっちゃダメかな」

「なんで?」

「僕が我慢できなくなるから。今でさえ麗華はこんなに可愛いのに」


ゆっくり頭を撫でる。


「もぅ、ゆう君。私は......限界かな。我慢できない」

「ちょ、だめ、だめ麗華」

「ノンストップだよ!ゆう君!」


それから、何とか麗華を説得してルールは守れた。



っと、こんな感じで僕の理性が危ない。それに、メンタル的にもきつい。麗華がしゅんっとしたりすると、僕の胸が痛い。


そっかぁ、デートか。麗華と思いっきりイチャイチャできるな。よしっ。


「ありがと、夏樹」

「おう。最近お前と遊んでないし、今度遊ぼうな」

「うん。約束な」


そうして、時間が経ち、帰りになり、麗華と合流する。いつもの場所で。


「あ、ゆう君!」

「ごめん、少し遅れた。じゃあ、行こっか」

「うん」



一緒に歩き出し、自然と手を繋ぐ。もう冬だから、少し歩きづらいけど二人三脚に近い形でくっつきながら歩く。お互い、もう自然と相手の歩調に合わせられている。


「あのさ、麗華。今週デートしない?」

「え!?う、うん。する。絶対、絶対だよ。できれば日曜日がいいなぁ」

「え?まぁいいけど」

「やった!ゆう君」

「ん?なに?」

「何でもない。呼んでみただけ」

「なんだよそれ」


と相槌をうち、麗華の方を見る。目と目が合う。


「好きだよ。やっぱりなんでもなくないみたい」


ふふっと微笑んで、前を向いてしまう。


「っ......。僕も」

「うん♪」










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