まとめ 7 お・み・く・じ
「おみくじを引きましょう。お・み・く・じ」
彼女は右手の人差し指を立てて、左右に4回振った。
おみくじ。
おみくじと彼女には、因縁めいた根深いエピソードがある。
初めて二人で神社に行った日だった。彼女の引いたおみくじが、『凶』だったのである。『凶』と記されたおみくじを、オレは人生で初めて見た。『凶』を引いた彼女はがっくりと肩を落とし、数分間地面を凝視していた。そして、おもむろに境内の掃除を始めた。瞳に泪を湛えるその彼女に、オレは声をかけた。
「もう1回、引けばいいじゃん」
「……確かに、そうね …… うん、ありがとう。私がバカだったわ!」
あの時の彼女の会心の表情、は今でも脳裏に焼き付いている。
それ以降、『大吉』が出るまで、おみくじを引き続けるという性癖が、彼女に加わった。この「おみくじワンチャン」の件に関しては、オレも責任は感じている。
「大吉よ、ダ・イ・キ・チ」
満面の笑顔の彼女はその場で、360 度、回転をした。フワリと浮き上がり旋回する、ロングスカートは麗しく揺らめいていた。オレは安堵のため息をついた。
新鮮な太陽の光を浴びて、彼女はキラキラとしていた。
つづく
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