第63話

「で、どうしてそろそろとわかるの?」

「泰道くんも、わかるでしょ?」

ヤゴ・・・じゃなかった、フライくんは水面から顔を出している。


羽化に適切か、確かめているんだな。


「餌は、どうしてたの?」

「餌でなくて、食事」

「どっちでもいい」


餌らしきものは、見当たらない。


「やはり、メダカやおたまじゃくしを、与えてたの?」

「うん」

「よそのはいいんだね」

「うん。うちの子は可愛そう」

よその子は、可愛そうではないのか・・・


「で、羽化はどこで観察するの?」

「言わなくても、わかるでしょ?」


ここか・・・


「羽化が終わったら、窓を開けてね」

「了解」


そして、晩御飯を食べた。


さくらと差し向かい。

定番になりつつある。


メニューは、海老フライ。

さくらとふたりで、作った。


本を見ながら・・・


でも、油物は危険だな。


「ところで、さくら」

「何?」

「フライくんだけど」

「うん」

「トンボの英語の、ドラゴンフライから取ったの?」

「正解」

訊くまでもなかったな。


で、その夜。


「じゃあ、少し寝るから、羽化が始まったら起こしてね」

さくらは、僕のベットで仮眠を取る。


男として見られていないのか?

安心しているのか?


まあ、いいや。

明日は、寝よう。


深夜になったころ、フライくんが棒を登り始めた。

ここで落ちたら、溺れて死ぬんだよな。


小学生の時、トンボの幼虫はヤゴというのを、知らない先生がいた。

今も、教師をしているのか気になる。

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