第31話

浴場に着く。


「泰道くん」

「何?」

「浴場だからって、私に欲情しないでね」

しません。

ていうか、年頃の娘さんが、親父ギャグは止めて下さい。


「暑いから、少しは涼しくなったでしょ」

「なりません」

親父ギャグで涼しくなるんだったら、熱中症はありません。


「ところで、さくら」

「何?」

「入居者には、それぞれに担当者がつくんだよね」

「そうだよ」

「で、はち合わせる事はまずないと・・・」

「うん」

疑問を投げかけた。


「でも昨日は、はち合わせたけど・・・久子さんと・・・」

「ごく稀にね・・・まあ、隠れキャラみたいなものかな・・・」

その例えはおかしい・・・


男女のはさまれた、カワウソのカーくん改め、ゆきおくんの専用部屋。


「さあ、やるわよ。泰道くん」

「でも、ゆきおはどうするの?」

「そこの洗面器に入れておいて・・・」

でか!


「大丈夫だよ。大人しいから・・・」

「そう」

ゆきおは、こっちを見る。


眼がかわいらしい・・・


「お前、ここはどう思う」

なぜか、ゆきおから訊かれた気がした。

「退屈しないな・・・」

「それは、よかった・・・」

会話をしてみる。


動物は癒しというが、その意味では静養になるかもしれない・・・


「ほら、さぼってないで、掃除する」

「了解」


風呂桶を掃除した。

必要あるのか?


「ところで、さくら」

「何?」

「イルカは・・・いないよね・・・」

「イルカは、ここには、いるか・・・」

期待に答えてくれて、ありがとう・・・

さくらさん・・・


「イルカは、自然に会えるから、ここで雇う必要はないんだよ」

会えるの?


わけわからない・・・


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