第28話

「よっ、泰道、先程ぶり」

「先程ぶりです」

秋吉さんが、久子さんと、入ってきた。


お菓子をたくさん持ってきている。

飲み物もある。


「秋吉さん、そんな大荷物で、肩痛めないんですか?」

「利き腕じゃないから、大丈夫だよ。サンキュー」

「いや・・・」

確か、野球選手、特に投手は利き腕では、重たい荷物は持たないらしいが・・・


「俺もいるから、大丈夫だよ」

久子さんは言う。

「俺は、並みの男よりは力、あるからな」


余計なお世話だ。


「じゃあ、俺たちは、これで・・・」

「えっ?」

どう言う事だろう・・・


「邪魔しちゃ悪いからな」

「さくらと、仲良くな・・・」

去って行った・・・


そこへ、あすかさんと、みずほさんと、さおりが来た。

料理を持ってる。


「泰道くん、その机、出してくれる?」

さくらに頼まれる。

いつの間にか、机が置いてあった。


気がつかなかった・・・


あすかさんが、白いテーブルクロスを机にかぶせる。

そして、僕の肩を軽くたたいて、去って行った。


みずほさんと、さおりが、ご馳走を並べた。

そして、僕にウインクをして、去っていた。


「さっ、泰道くん、食べよう」

「えっ、これは?」

「少し遅くなったけど、君の歓迎会」

「歓迎会?」

さくらは頷く。


「本来なら、私が手料理をふるまいたかったけど、下手だから・・・」

いや、この場合は、気持ちが入っていればいい。


「じゃあ、泰道くん、ようこそ、かすみ静養所へ、そして、あらためてよろしくね」

「よろしく」


ジュースで乾杯をした。


ふたりだけの、歓迎会及び、親睦会。

忘れかけていた、人の心が、ここにはあった。

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