レポート29:『頼もしいやつ』
5本中3本を決め、相手は未だ1本の3対1。
「おい」という黒木先輩の声かけにより、久保先輩が近くに寄り、多田野先輩も手招きされ三人が集まる。
故にこちらも、富澤のもとへ歩み寄り、三人で集まった直後、氷室が富澤に笑顔で肩を回していた。
「やったなあ!」
「はい」
富澤の頭をくしゃくしゃにかき乱すように撫で回し、そんな氷室に富澤は満更でもない笑顔を見せる。
「とりあえず、上手くいったな」
富澤から離れる氷室に「ああ」と気のない返事をしながら、乱れた髪を手櫛で直す富澤を眺める。
「あと、2本……」
一つのプレー時間は短いのに思いのほか先が長く感じて、気が滅入る。
5本中、3本先取した方が勝ちというルールにすればよかったと、今になって無策で決めたことを後悔する。
「んじゃま、後は俺が暴れるということで」
無邪気に笑う氷室を目に『頼もしいことで』と口元が緩む。
何故だろうか、氷室が自信満々に発言すると、何かやってくれそうな気がする。
――いいや、違うな……。
やってくれそうな気ではなく、氷室は必ずやる男なのだと、首を振って訂正する。
期待を裏切らない男、それが『氷室輝迅』という男だから。
有言実行する彼に誰もが信頼を置き、氷室は無意識に応えていく。
ほんと、かっこいいのは見た目だけにしてほしいと、そう思う。
「―――」
ふと先輩たちに目を向ければ、自然と目が合い、それが勝負再開の合図だと察する。
黒木先輩にボールを渡し、対峙する。
そうして無言のまま、3回戦後半は
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