【マルチエンディングその2】「俺の得意技」編


 ——だって、あたしは年増だから!


 中学を卒業して就職したあたしは高校生活を知らずに社会に出た。


 ずっと後悔してた。女子高生になってみたかった。かわいい制服を着たかった。


 高校でどんな難しい授業を受けられるのだろうと思った。中学のときは勉強なんて大っ嫌いだったけど、大人になってから、子供のときにもっと勉強しておけばよかったと思った。


 世の学歴社会だ。中卒じゃばかにされる。


 わたしは35で会社を辞め、晴れて女子高生になった。誰が何と言おうとJKだ。


 みんなに合わせるため女子高生言葉も勉強した。チョベリバ!(←でも、20年前の知識)


 愁斗君の友達がやめろよ、というのは当然だ。今は未だいいかもしれないが、この年齢差は歳が立てばたつほど、身に染みることだろう。あたしだけ先に老いるのだ。今はまだ彼はラブロマンスを感じているかもしれないが、そんなのは、ほうれい線がでてきたあたしの顔を見ていたら、すぐに誤解だと分かるはずだ。



「愁斗君、こんな、おばさんはやめて!」


「小雨、年の差があるのは承知の上で好きになったんだ。俺が小雨のことを好きならいいじゃないか」


「だから、それは今だけだって。すぐに老けたあたしがいやになるわ! 愁斗君は若いんだから、同年代の子と付き合って!」


「歳の差の壁なんて、俺のシュートで余裕に突破できるさ。俺の得意技はカウンターだ。ディフェンスラインから一気にドリブルで駆けあがるんだ。20歳の差なんてあっという間に追いつけるよ」


 イ、イケメン!


 あたしのゴールネットは彼のシュートによって射抜かれた。


 あたしは一生、愁斗君についていこうと思った。



 ——了。


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