【マルチエンディングその1】ラブロマンス? いいえ……



 だって、あたしは――デブだから!


 そう、ラブロマンスなんかない。ロマンスである。


 でも、彼はいつも優しかった。あたしをおんぶしてきたときも、重かっただろうに。彼は決して、重いなんて言わなかった。


 彼が『あれ、今さっき地震があった?』なんて聞いてきたけど、きっと巨体のあたしが走っていったから床が揺れただけだ(ドシーン、ドシーン)。


 ここにあるのは、ラブコメではなく、コメだった。


「愁斗君はデブ専なの!? なんで、あたしなんかと付き合ってるの」


「そんな自分を卑下しないでくれ、小雨は世界一かわいいよ!」


「かわいくないって!」


 女友達はお世辞でかわいいなんていうけれど、太ってるあたしがかわいいわけがない。



「俺がかわいいと思ってたら、それでいいじゃないか。小雨が俺ん家に来たときに、階段で行って身体を引き締めるって言ったとき、なんてかわいいんだと思った。かわいいって、見た目とかじゃなく、そういうところからくるんじゃないか」


 ああ、なんて彼はイケメンな心を持っているのだろうか。「あたし、ドスコーイだけどいいの?」


「ドス恋、いいじゃないか。俺は小雨にぞっこんラブだよ!」


「ぞっこんデブになっちゃうよ」


「なにそれ」彼は笑い飛ばす。


 全ては彼の優しさなのだろう。映画館で隣の席も余分にとってくれたのも横幅あるあたしへの配慮だ。


 こんな性格イケメンな人は今後出てこないだろう。


 あたし、この人とラブストーリー……じゃなかった、デブストーリーを綴ってもいいですか?


 ドスコーイ(やけくそ)。

 

 ――了

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