第145話電車からの風景

 何気ない電車からの風景を描写してみると、それは日本の平均的な郊外のそれであるとしかいいようのないありふれた光景だ。

 こじんまりした住宅がならび、舗装された護岸に囲まれた川が流れ、多少大きな通りにはファミレスがキラキラと存在感を誇示している。

 そこにはここは日本のどこそこである、という明確な自己主張はなく、場当たり的に建て増しをしてきたいびつな建物のように、とりとめのない構造物が並ぶ。

 そんな無機質で均一な空間を私は気に入っている。そこには時代というものを反映しない独立した時空が存在する。たぶん10年後も、20年後も変わらないのだろうと思わせる静止した空間。

 私は変わらないでい続けるものに憧れる。それは今のこの日本の平和を満喫できるという象徴であるからである。変わらないということは平和であるということの裏返しだ。

 いい場所、いい時代に生まれたものだ。

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