第76話 英雄現れる

「魔法新宿の悪い魔法使いたちは、我が魔法渋谷騎士団が倒しました! もう安心してください!」

 望のクラス委員長としての演説が渋谷区役所から放送されている。

「ええー!?」

「どういうこと!?」

 いきなりの悪い魔法使いの戦争行為に人々は望の言葉を聞くまでは絶望していた。

「どんなにつらい状況でも諦めないでください! 夢と希望は誰にも奪われません! 戦うことを諦めないでください! 絶望して無抵抗にならないでください! 少しの勇気で平凡で幸せな生活を取り戻すことができるのです! みんなでがんばりましょう!」

「おお! そうだ! 戦おう!」

「自分の未来は自分で守るんだ!」

「おお!」

 迫害されていた一般人たちが望の演説を聞いて立ち上がる。

(いいぞ! いいぞ! 風が右から吹けば左に飛ばされて、右を向けば右を向く人間どもだ。少しいじめれば屋上から飛び降りろと言われれば、屋上から飛び降りるような自分の意思を持っていない生きる屍、それが一般大衆だ。精々、俺のために各地で暴動を起こせ! そこを俺が助ける! そして俺は人々の救世主・・・・・・いや、俺は英雄になり人々から崇めたてられるのだ! ワッハッハー!)

 望は、暫定的だが魔法渋谷区役所を手に入れ、渋谷区長の座を手に入れた。


「報告いたします。クラス委員長。」

「その言い方は間違っている。今の私は魔法渋谷区長だ。分かったか? 副区長たち。」

「はっ。」

 あれから望は渋谷区長の座を手に入れた。大人や奪いに来る者は全て夢の世界に追いやってしまうのだ。なんの証拠も生き証人も残さない完璧な行いである。

「各地暴動が起こり、人々が助けを求めています。」

「そうだろうな。人々が俺たちを待っているのだ。助けてくれ、助けてくれと救世主が現れるのを待っているのだ。その期待に答えなければいけないな。」

 望の眼差しの先には、魔法東京だけでなく、魔法日本、そして最終目的の世界征服を見ている。

「だが、その前に今回、我々を窮地に陥れてくれた者たちのことを知っておかなければ、対策の立てようがないからな。」

 望は地下倉庫へ向かった。

「顔を上げろ。手荒な真似はしていないつもりだ。あなたが我々にもひどい扱いはしなかったのでな。」

「クッ。」

 地下倉庫には捕虜になっている魔法新宿の魔法使いがいた。この魔法使いは望を捕まえて丁重に扱ってくれた魔法使いだった。

「さあ、知っていることを全部話してもらおうか。」

 望は知識を得ることで、これからの激しい戦いを有利に進めようとするのだった。

 つづく。

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