第72話 他に魔法使いがいた

「分からない!? 何が起きているんだ!?」

 望は自分の想定外の出来事に少し慌てて動揺している。

「俺も区役所に向かうぞ!」

 望は魔法渋谷区役所に魔法のほうきに乗って向かう。

「火の手!?」

 渋谷区役所の付近が火の海になっていた。

「これはどういうことだ!? 状況がつかめない!? 早く本体と合流しなければ!?」

 望は他人任せだったので司令官の委員長であるが事態を把握していなかった。

「なんだ!? おまえたちは!?」

 その時、渋谷上空で望は見たこともない魔法使いの集団に囲まれる。

「あなたも弱い渋谷区の魔法使いさんのようね。」

 謎の魔法使い集団の隊長らしきものが望に声をかける。

「弱いだと? まあ、いい。では聞こう。強い魔法使いのおまえたちは何者だ?」

 望は素直に自分の理解していないことを知りたいので尋ねた。

「知りたければ、降伏しろ。これから面白い演説が行われるところだ。おまえも見るがいい。キャッハッハ。」

「いいだろう。降伏しよう。俺の身の安全は保障してくれるんだろうな。」

「ああ、他の捕虜の魔法使い同様、従ううちはな。」

 こうして望は拘束され、渋谷区役所に連行される。

(こいつらは何者だ? 手慣れているということは、だいぶん前から決起する機会を狙って訓練を積んできているのだろう。まあ、いい。俺の手駒は捕虜として生きているのだから。生きていれば、まだまだ俺の命令を聞かすことができるだろうからな。きっと俺ならどうにでもできるだろう。この難局を乗り切ってみせる!)

 捕まっても望の野心は消えていなかった。 


「全魔法渋谷区民よ! よく聞け! 私は魔法大都市新宿区長第魔法使いの住吉健だ! 今から渋谷区民の豚どもは魔法新宿区民として生きよ! これは魔法大都市新宿帝国の世界征服への第一歩だ! 私は魔法で世界を征服して、地球を我が物とするのだ! 歯向かう者は皆殺しだ! 税金も新宿区に納めるのだ! ワッハッハー!」

 渋谷区役所を制圧したのは新宿区の魔法使いたちだった。

(俺が言いたかったのにー!!! 許さん! 許さんぞ! クソ魔法使いめ! 何が魔法皇帝だ! この世は全て俺の物だー!!!)

 不逞の輩に出し抜かれた望の心の中は、はらわたが煮えくり返る思いだった。

(ふん、まあいい。俺の渋谷区に攻めてきたのは、新宿区だったのか。確かにあり得ない話ではない。俺が魔法使いになれたんだ。他の人間が魔法使いになっていても不思議はない。ただ新宿区長は一つだけ間違いを起こした。俺のいる新宿区に攻め込んできたことだ! これから涙が枯れるまで後悔させてやる!)

 冷静さを取り戻した望の魔法渋谷区奪還作戦が始まる。

 つづく。

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