第63話 この世界は何でできている?

「う~ん。分からん。」

 望は何かを悩んでいる。

「珍しいわね。望でも悩み事があるの?」

 希が遊び半分に茶化す。

「能天気なあなたと望を一緒にしないで。」

 イバラが望をかばい、希をコケにする。

「なんですって!?」

「やるなら相手になってあげるわよ。」

「ウッキー!?」

 相変わらず希とイバラは犬猿の中である。

「で、いったい望は何を悩んでいるの?」

 望の夢に住み着いているリリスが現れて尋ねる。

「この世界は何でできているんだろう?」

 灰色の魔法使いが言っていたことを、望はずっと考えていたのである。

「お金じゃない? だって人間はお金が好きなんですもの。」

 この世の中は子悪魔から見ても人間はお金好きに見えている。

「でも、それって夢魔法を使う俺自身を否定していることになるし。」

 夢を否定することは、望の場合は自己否定になる。

「そうよね。私も望の夢の中に住んでいるものね。」

 小悪魔リリスも自分の立場が無くなってしまうのだった。

「お金でもなく、夢や希望でもない。」

「かといって、心としてしまうと、この物語のコンセプトが違う。」

「やっぱり人間? それとも分子? 原子?」

「人間は自然には、どうあがいても敵わないしね。」

 望とリリスは悩み続ける。

「くらえ! 目からビーム!」

「飛べ! 学校指定の靴!」

 未だに希とイバラは戦っている。

「いつも通りだね。」

 そこに妹の美杉がやって来る。

「あ、美杉。おまえはどう思う?」

「何が?」

「この世界は何でできているかだよ。」

「この世界!? 望お兄ちゃん!? 熱でもあるの!? 何か命にかかわるような病気にかかったんじゃ!?」

 いつも悩み事をしない兄の望が悩み事をしていると、妹の美杉は兄を心配するのであった。

「簡単だよ。私たちには分からないんだから、いくら悩んでも答えは出ないよ。それなら、答えを知っている人に聞けばいいんじゃない? 渋天様に聞いあげる。」

 美杉は脳みそは5才の純粋なので体裁は気にしない。

「そうか! その手があったか! 渋天なら何か知ってるかもしれない!」

 望も我が妹ながら立派な妹を持ったと喜んだ。

「いでよ! 魔法のスマホ! 渋天様に電話して。」

 魔法のスマホは音声認識である。

「誰だ?」

「もしもし? 渋天様? 私、私。」

「どうした美杉。」

「聞きたいことがあるんだけど、この世界は何でできているの?」

「この世界? そんなもの神様が作ったに決まっているじゃないか。キターーーーー! 私は今、魔法世界陸上を見て猛烈に感動している! そんなつまらないことで電話してくるな!」

 この世界は神様が作ったのだった。

「・・・・・・ということです。」

「渋天の奴、人間界に完全に染まっているな。」

 問題の答えよりも、堕天使の生活に関心がいってしまう望であった。

 つづく。

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