第60話 18階
「さ、桜!? ビルの中に桜の木が植えられてある!?」
「花見でもしろというのか? 悪夢でも見ているんじゃないでしょうね。」
希たちが18階にたどり着いた。18階はピンク色の桜がきれいに咲いていた。
「ようこそ、桜の咲く季節へ。」
「出たな!? 灰色4号!?」
希が声のする方へ振り向くと灰色の魔法使いが現れた。
「はい。私の名前は灰色4号3分の1です。」
「気をつけて!? 前の奴みたいに不意打ちで太陽光線が飛んでくるわよ!?」
希とクロムは、灰色の魔法使いの攻撃に身構えて備える。
「私は皆さんと戦う気はありません。」
「なに!?」
灰色の魔法使いは戦う気はないと言うのだ。
「分かった! こいつは嘘つきだ! 私たちを油断させて後ろから襲う気だ!」
「おまえと一緒にするな。」
いつの間に希とクロムは仲良しになっている。
「本当に私は戦う気はありませんよ。お茶をたてますから、桜餅と一緒にお食べ下さい。」
灰色の魔法使いから戦意のようなものは感じられなかった。
「ど、どうする?」
「確かに喉も乾いたような?」
それでも灰色の魔法使いの強さを身をもって味わってきた希たちは警戒心を解くことができない。
「後ろで倒れている方の治療もしてあげましょう。」
「望!?」
未だに望は、灰色の魔法使いの攻撃を受けて意識不明の重体だった。希は心配そうな顔で望を見て決意する。
「休ませてもらいます。その代わり少しでも変なことをしたら、ただじゃおきませんからね!」
「はい。どうぞ。」
笑顔で灰色の魔法使いは希たちを受け入れる。
「私はトイレに行ってくる。」
「廊下の奥です。」
クロムは席を外す。
「うわ~!? きれい!?」
18階には桜の庭園がありお茶会の準備ができていた。
「それではお茶をたてます。」
灰色の魔法使いはお茶をたて始める。その手つきは茶道の師範といったところの腕前だった。
「2回器を回してから飲んでください。」
「はい。」
初めて茶器でお茶を飲む希。
「おいしい! 苦くもなくて飲みやすい!」
「ありがとう。さあ、桜餅もお食べ下さい。」
「いただきます!」
この頃には希は灰色4号に敵対心は無くなっていた。
「あの~、質問してもいいですか?」
「どうぞ。」
「どうして敵である私たちに親切にしてくれるんですか?」
希の素朴な疑問である。
「私は感動しているのです。あなたたちみたいな魔法使い見習いレベルのひよっこが、3人もの灰色の魔法使いを倒して、私の元にたどり着いたことに。それに私が戦かわなくても、そのうち、あなたたちは確実に全滅しますから。」
灰色4号3分の1も、只者ではなかった。
つづく。
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