10 世界を、幸せに。

 「そっか……。そういうことか」

 一周回って、やっと僕にも理解できた。アヤナが生まれ、存在する理由。それは人類全員の希望である「幸せ」の実現なのだと。


 「わかってくれて、何よりだよ!それで、光太くんにも手伝ってもらいたいの」


 あ、そういえばそんな話だったな。でもこんな何の取柄もない僕に、いったい何ができるというのだろうか。


 「だからそうやって自分を卑下しない!……で、光太くんには“観測者”になってもらいたいの」

 「観測者?」

 「うん。説明するのは難しいんだけど――簡単に言えば、私が本当にみんなを“幸せ”にできているのか、見てほしいの。お願いしてもいい?」

 「見るだけなら、全然……あ、でもアヤナは万能なんだよね?だったら僕が見て確かめる必要もないと思うんだけど」

 「あ、えと、それは……う、ううん、ちょっといろいろあって、違うの、あ、いや私は万能なんだけど……」


 全知全能の天使さまが、何やらパニクっている。

 

 もしかしてアヤナは万能じゃないんじゃないか――と聞きそうになったが、それを口に出すのはすんでのところで止めた。理由は自分にもわからない。ただ、それを聞くと何かが壊れてしまうような気がした。


 「ああ、わかった。アヤナのことを、ずっと見てるよ」


 「えっ!?――う、うん、ありがとう!お願いするね」

 アヤナの白い肌がやけに赤いが、どうしたのだろう。僕はなにかおかしなことを言っただろうか?


 「じゃ、じゃあそういうことで、私はに戻るから!じゃあね!」


 そう言うと、彼女は一陣の風のように去っていった。――というより、消えた。


 すると、景色に「色」が戻ったような気がした。


 次の瞬間――僕はいつものように、クラスメイトたちに囲まれて座っていた。


 「え、えっ!?」


 「何だよ出月。どうかしたのか?」


 「あ、いや、どうもしないけど……」

 怪訝そうに聞く友人を何とか誤魔化し、僕はあたりを見回す。

 何の変哲もない、朝の教室の風景がそこにあった。

 僕は実感する。


 

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