ここは、天使の夢世界。

結城 彩斗

01 唐突な、自分語り。

 朝、7時12分。けたたましく震えている机の上のスマホに起こされて、僕は目を覚ます。抗い難い布団の誘惑を必死に振り切って起き上がり、顔を洗って、制服に袖を通す。当たるかもわからない天気予報を見ながらご飯を掻き込み、母親にごちそうさまでした、と言ってリビングを出る。特に面白くもなさそうな今日の時間割を一瞥いちべつして、鞄に教科書とノートとペンケースをさっさと詰め込む。重たくなった鞄を背負いながら階段を降りて、寝起きで不機嫌そうな2歳下の妹とはち合わせ、これまた不機嫌そうに挨拶を交わす。玄関で靴を突っ掛けて、別段イケメンでもない自分の顔を眺めて意味もなく頷き、僕はドアを開ける。

 ここまで所要時間は22分、時刻は7時34分だ。ここから天野原あまのはら駅まで歩いて約10分。電車が来るのは7時47分。ギリギリ間に合いそうだが、ここで遅れたばかりに高校入学から半年近く続けてきた無遅刻・無欠席を破る、なんてことにはしたくない。そういうことで僕、出月光太いでづきこうたは駅に向かって走り出した。


 ――って、どうして僕は自分語りなんかしてるんだ?実は自分、自意識過剰?いやいや。そんな要素はどこにもないはず。悪い夢を見た覚えもないし、感傷的センチメンタルな気分に浸っているわけでもない。よくわからないけど、この問題はとりあえず後回しにしよう。電車に乗り遅れたら元も子もない。どうせ気のせいだろうけど、暇つぶしに満員電車の中で考えてみるのも悪くはないか。


 今日もこれから、何の変哲もない平凡な一日が始まるのだから。

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