第10話 レベル50のダンジョン〜技術を磨き始めた件〜

レベル50のダンジョンがある町に着くと、まずはギルドへ向かう。

いつものように情報収集だ。


「このダンジョンではウェアウルフが出るのか」


ウルフウルフ、別名は狼男。

鋭い爪と牙を持ち、俊敏な動きで冒険者を襲うモンスターだ。

爪の切れ味は凄まじく、鉄をもたやすく切り裂く。

顎の力も相当なようで、一瞬で食いちぎられてしまうらしい。

情報を集めると、さっそくダンジョンへと向かった。



「今回からは油断しないでいくか」


今までは力任せに暴れていたが、これからは技術も身につけなければいけないだろう。

ボスを倒してステータスが下がったとしても、無事に帰れるようにしなければならない。

カタナを抜くと、ダンジョンへ潜っていった。


「あれがウェアウルフか」


顔は狼で体は人間そっくりだった。

大きさはショウより少しだけ大きい、開いた口の中には鋭い牙が並んでいた。

物陰から様子を伺っていると、鼻を上に向けて臭いを嗅いでいるようだった。

ウェアウルフの手に生えた鋭い爪が光を反射して光っていた。

ウェアウルフが突如ショウの方を向く、どうやら気づかれたようだ。


ショウの方へ一足で飛びかかってくるウェアウルフ。

ショウは爪に気をつけながらウェアウルフめがけてカタナを振るう。

体を綺麗に両断されたウェアウルフは地面に落ちる前に灰となって消えてしまった。

ドロップアイテム[ウェアウルフの毛皮]を手に入れた。


「何とかなりそうだな」


ショウはアイテムを回収する。

次のダンジョンではこのアイテムが必要らしいので、集めておく必要があった。


進んでいるとウェアウルフの群れが冒険者達と戦っていた。

どうやら冒険者達が優勢のようだ。


「戦士一人に神官と魔法使いか、前衛が足りないけど良いパーティだな」


3人とも連携がとれていて、危なげなくウェアウルフを倒しきる。

レベルもかなり高いようだ。

アイテムを回収するとこちらへ戻ってくる、奥へは行かないのだろうか?

すれ違うときに戦士の男に声をかけてみた。


「ちょっと良いか?ボスには挑まないのか?」


戦士の男はショウを怪訝な顔でみている。

この高レベルのダンジョンに一人でいるのが怪しいのだろう。


「俺たちは毛皮を集めに来ただけだからな、それにボスならいなかったよ。どっかのパーティが倒した後なんだろうさ」


ショウがお礼を言うと、出口へと向かっていった。


「ボスがいないのか、どうしよう」


ボスがいないのであれば奥へ進むメリットは感じない。

しかし戦い方の練習にはなるだろう、そう思い最深部まで進むことにした。


しばらく進むと、ウェアウルフが3体現れた。

ショウの周りを囲みうなり声をあげている。

同時に飛びかかってくる6本の爪を見切り完璧に避ける。

ガラ空きの胴体に向けてカタナを振るう、3体はドロップアイテムを落とし灰になり消えてしまう。


「だいぶコツがつかめてきたな」


ショウはカタナを力任せに振るうのではなく、ひたすらに綺麗な型で振るうことを練習した。

力を込めずとも綺麗に振るえば大抵のものは切り裂くことができた。

これならステータスが下がっても同じように扱えるだろう。


最深部までついてしまった。

道中も何体か出てきたが、同じようにカタナの練習台になってもらった。

レベルは上がりステータスは下がっているだろうが、入ったときと変わらず苦戦することはない。

技術を磨くことの大切さを改めて実感するのだった。


「ボスが復活したらまた来るか」


ギルドではボスの復活周期を聞いていない。

明日聞いてみることにしよう。


戻っている途中、地面に真新しい血の跡があった。


「おかしいな、来る時はこんなのなかったぞ」


どうやらかなり激しい戦闘があったようだ。

壁や床、天井に至るまで鋭い爪の跡があった。

床には冒険者のものと思われる物も落ちていた。

どれも傷だらけで血まみれだ、おそらく持ち主は生きていないだろう。


「これって多分、あの3人のだよな」


落ちている物の中に見覚えがある物があった。

ショウが最深部へ向かう前に出会ったあの3人組だ。

考えづらいがまさかウェアウルフにやられてしまったのだろうか・・・


背後から嫌な気配を感じ急いで前へ飛ぶ。

ショウのいた場所に鋭い爪が突き刺さっていた。


「こいつがやったのか」


振り向いた先には漆黒の毛皮をまとった巨大なウェアウルフが立っていた。

大きさは通常の個体の3倍はあるだろう、爪も長くまるで剣のようだ。

大きく開いた口の周りに冒険者が来ていた服と同じ色の布が挟まっていた。

漆黒に見えた毛皮はどうやら返り血が固まったもののようだ。

最深部にいなかったボスはおそらくこいつだろう。


「入ったやつを逃さないってか。真面目なボスだな」


ショウがカタナを構えると、モンスターが咆哮を上げて飛びかかってきた。

迫り来る爪を躱し、ボスの懐へ潜り込む。

カタナを振り上げようとした時、巨大な足が迫ってくるのが見えた。

ショウは振り上げる手を止め、急いで後ろへ飛び退く。

目の前スレスレを通り過ぎる足めがけてカタナを振るう。


「早いな」


ボスの足から血は流れているが、傷は浅い。

鋭い爪に加えこの身体能力、あの3人組が勝てないわけだ。

ショウは迫り来る爪を今度はカタナで弾く、斬ることができなかった。

ボスはショウに向かってとてつもない速さで爪を振り続ける。

降り注ぐようなボスの爪を、ショウはカタナで完璧に防ぐ。

一度喰らえば間違いなくダメージを負う、そうなっては勝つことは難しいだろう。

ひたすらに耐えた、ショウにとって永遠かと思うような時間が過ぎた時チャンスは来た。


「いける!」


爪に向けてカタナを振るう、今度は爪を切り落とすことができた。

ショウは爪を弾く間ずっと同じところにカタナを当て、徐々にだが爪を削っていたのだ。

爪がなくなったボスの首めがけ、カタナを振るう。

だが、ボスはカタナを口で止めてしまった。

ショウは殴り飛ばされ、地面に叩きつけられる。

背中を強打したせいか呼吸が止まるが、なんとか立ち上がる。

ショウガ倒れていた場所にボスの足がめり込む。

その足めがけてカタナをふり、切り落とす。

足を失ったボスは、残った手足を使い矢のように飛んできた。

口を開けて大きな牙を見せている、どうやら噛み殺す気のようだ。

ショウは迫りくるボスを避けると、すれ違いざまに首を切り落とす。

地面に落ちたボスはレアドロップ[ウルフキングの毛皮]を落とし灰となって消えてしまった。


目当てのアイテムも手に入れたしカタナの扱い方も上達することができた。

充実感を胸に宿へ戻る。


いつものようにスライムちゃんを抱きしめてベッドの上で横になる。

ふいに、今日ダンジョンで出会った3人のことを思い出す。

彼らはとても強かった、それでもダンジョンでは死んでしまうこともあるのだ。


「俺もちゃんと頑張らないとな」


力に頼るだけでなく技術を磨くことを胸に誓い眠りについた。


翌朝

ショウはレベルマイナス999、スライムちゃんも呪いにはかかっていなかった。

心配なので、これからは毎朝確認することにしたのだ。

スライムちゃんを箱に入れ、次の町へ走る。

次の目的地はレベル55のダンジョンだ。


「でもこの毛皮が何の役に立つんだろうな」


ウェアウルフの毛皮は4枚ほどを残し全て売った。

どうやら次の町で加工してもらえるようだが詳細は教えてもらえなかった。

疑問に思いながら次の町へと向かうのだった。

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