第8話 レベル45のダンジョン~スライムちゃんが最強になっていた件~

レベル45のダンジョンがある町へ着いた。

今回もギルドで情報を集める。


「今度のモンスターはミノタウロスか」


上半身は牛、下半身が人間のモンスターだ。

ミノタウロスたちは、その装備によって分類されているようだ。

何も持っていないミノタウロス、斧を装備したミノタウロスなど様々な種類がいるようだった。


情報を集めるとさっそくダンジョンへとむかう。

前回のダンジョンでは火傷を負った事もあり、今回はダメージを受けるかもしれないと期待していた。


「今日こそ戦いになると良いな」


奥へ進むと、素手のミノタウロスを見つけた。

背丈はショウの1.5倍くらいだろうか?全身が筋肉の鎧を身につけているようだった。

ミノタウロスはショウに気づいたのか、うなり声をあげて突進してきた。

迫り来るミノタウロスの頭を片手で止めると、その頭に向けて拳を振り下ろす。

頭を粉々にされたミノタウロスは灰になって消えてしまった。


「思ってた以上に弱いな。まだレベルがマイナス999だからか?」


ミノタウロスの突進でショウはびくともしなかった。

どうやら前回のボスと戦ったときはだいぶレベルが上がっていたようだ。

そのせいで能力が下がり、火傷を負ってしまったのだろう。


「あんまり戦わないようにしないと、ボスで苦戦しそうだな」


実際ショウの強さはとんでもないが、敵を倒す度に弱くなるのは問題だった。

道中の敵が強いほど得られる経験値もおおい。

ダンジョンのレベルが上がるほど、ボスにたどり着くまでに弱くなってしまうのだ。


「だからといって逃げるわけには行かないし、どうしたもんかな」


考えている間にも剣をもったミノタウロスがこちらに向かってくる。

近づいてくるミノタウロスの顎を軽く叩くと、首が一回転して死んでしまった。

レアドロップ〔ミノタウロスの角〕を落とし灰になって消えてしまう。


「避けようにも触っただけでこれだもんな」


ゴブリンとぶつかっただけで殺してしまったことを思い出す。

ゴブリンが弱いだけだと思っていたが、どうやらショウは自分の想像よりはるかに強いようだ。


しばらく進むと、立派な鉄の鎧を身につけ、巨大な斧を持っているミノタウロスが道をふさいでいた。

ショウは何も気にせずミノタウロスに向かっていく。

ミノタウロスがショウに気づき、うなり声を上げながら近づいてくる。

振り下ろされる斧にショウは拳を合わせる。

斧はショウの拳によって粉々にくたがれ、武器をなくしたミノタウロスが殴りかかってきた。

ショウはその拳をなんなく受け止めると、目の前の鎧めがけて蹴りを叩き込む。

鎧が大きな音をたててへこみ、吹き飛んだミノタウロスは壁に叩きつけられ灰になって消えてしまった。


「防具着てても関係なしか」


これでも手加減したんだけどな・・・。


その後の道中も何度か襲われたが、どのミノタウロスも一撃で死んでしまった。


「ここが最深部か。ボスを倒してさっさと帰ろう」


ミノタウロスを30体以上倒したのだ。

パーティーならまだしも一人では手に入る経験値もおおい。

レベルが上がりすぎる前に早く決着をつけたかった。

少し探すと、ボスはすぐに見つかった。

体はショウの2倍以上ある、真っ赤な体毛に覆われたミノタウロス。

両手にはショウと同じ大きさはある大きな剣を持っていた。

ボスはショウに気づいたのか剣を振り回しながら近づいてきた。

ダンジョンの天井、壁や床などを切り裂きながら迫ってくる。

これでは避けるスペースなどない。

まだ大丈夫だろうか、不安ではあったが両手で受け止める。


「いってぇ!なんて力だ!」


受け止めたショウの手から血が流れている。

レベルマイナス999になって初めてダメージを受けた。

手に力を込めるが剣を握りつぶすことが出来ない。

仕方なく手を離し、ショウはカタナを抜く。

振り下ろされる大剣めがけてカタナを振るった。

カタナは大剣をやすやすと切り裂いた。

ミノタウロスが束だけ残った剣を捨てる。

4つんばいになるミノタウロス、諦めたのだろうか。

すると次の瞬間、矢のような速度でショウに向かって飛んできた。

ショウは自分の前にカタナを突き立てると、それを支えるように踏ん張った。

カタナに向かって飛んできたミノタウロスは、全身を両断され灰となって消えてしまった。


「・・・危なかった」


ボスは消えたがショウの右腕には大きな赤い角が突き刺さっていた。

ボスのレアドロップ〔赤い角〕だ。

ショウはカタナをしまい角に手をかける。

激痛に耐えながら角を抜くと、服を破いて包帯代わりに止血した。

最後の瞬間、久々に死の恐怖が襲ってきた。


傷ついた右腕を押さえてダンジョンの出口へ向かう。

だが、ミノタウロスに行く手を阻まれてしまった。

仕方なく戦うが、行きよりもかなり強い。

どうやらボスを倒したことでだいぶレベルが上がってしまったようだ。

幸い強めに殴れば一撃で倒せたので、片手でもそこまで苦労せずにすんだ。

宿へ帰ると、さっそくスライムちゃんを抱きしめる。


「今日はやばかったな」


ショウのレベルはマイナス731まで上がっていた。

レベルの上がる速度が明らかに早い。

敵が強くなるにつれ得られる経験値が多く、別の意味で攻略しづらくなっていた。

スライムちゃんをダンジョンで出して抱きしめればいいのだが、他の冒険者に見られたらアウトだ。

それに抱きしめている時にモンスターと出会ってもダメだ、攻撃を受けたら彼女(?)が死んでしまう。

どうしたものか悩んでいると、右腕の痛みが消えていることに気づいた。

確認してみると傷は綺麗に治っている。


「レベルが下がって治癒力が上がったのか?」


それにしては早すぎる。

まだスライムちゃんを抱いて3分も経っていない。

気になってステータスを見ると、なんとレベルはマイナス999になっていた。

スライムちゃんの経験値を吸う速度が上がっているのだろうか?

そういえば吸われた経験値はどうなっているのか?

経験値を吸っているということは、今までの分スライムちゃんはレベルアップしているのではないか?

ショウの頭の中を様々な疑問が駆け巡る。


「試して見るから・・・サーチ」


ショウはスライムちゃんを離すと、モンスターの能力を見ることが出来る魔法をかけた。

スライムちゃんの前にショウの時と同じようにステータスが表示された。


「嘘だろ!?」


そこに並んだ数字を見て驚く。

なんと、スライムちゃんはレベル472。

ほとんどの能力がAだった。レベルドレインと守備力に至ってはSSだ。

ショウの予想通り、スライムちゃんのレベルは上がっていたが予想以上に高い。

どうやら毎日ショウのレベルを吸っていたことで、能力が強化されたのだろう。


「でも何で守備力までSSなんだ?」


考えても答えは出ない。


※スライムちゃんは毎日寝ているショウに抱きしめられている。

その力に対抗していたのでSSになるのは当然だー


「まぁ何でも良いか!でも嬉しいな一緒に強くなってたんだね」


スライムちゃんを優しくなでる。

レベルマイナス999になっているショウから経験値は吸えないのだが、離れないところを見るとよっぽどなついているようだ。


「今日はもう寝ようか」


魔法を解除しようとしたとき、ステータスの欄にもう一つ文字が書いてることに気づいた。

その文字を見たショウの動きが止まる。


「嘘・・・だろ・・・」


状態:呪い


スライムちゃんは呪いにかかっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る