暗くならない部屋で
僕は書棚の奥の奥の そのまた奥にあった絵本を取り出した
埃は被っていたものの
おかげで陽に焼けることなく
指で少し拭うと
昔のままの つるつるした輝きが目の前で戻った
僕はこの絵本が大好きだった
おそらく 一番好きな絵本のままだ
どんなに 嫌なことがあって泣いた日であっても
嫌いなおかずを目を瞑って鼻を摘みながら食べた日でも
早く寝なさい と大きな声で怒られた後であっても
この絵本のページをめくって読み始めれば
痛みが和らいだし
絵本を閉じて 目を閉じた後でも
ガラス窓の向こうのお月さまの位置を思い出し
2匹の子猫の様子を想像し
小さいねずみの居場所を探して
最後には
「静かにおし!」と人差し指を口に当てたおばあさんうさぎが居なくなった
ロッキングチェアを思い出して
その おばあさんうさぎを心配しているうちに
いつの間にか眠ってしまっていた
僕はその絵本の存在を何故 思い出し
何故 手に取ってみたくなったのか
それを考えながら眠るのはよそうと
昔のように
おばあさんうさぎが居なくなったロッキングチェアの絵だけを
頭に思い浮かべようとしたのだけれど
何故なんだろうね
部屋の中のいろんなものが見えてしまったままで
絵本のように ちっとも暗くなってくれないんだ
「おやすみなさい おつきさま」
https://www.youtube.com/watch?v=fnKe7AXolNU
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