去年の自分へ 平成29年2017年4月26日誕生日を前に

 去年の自分へ


 いやぁ、すまない、去年心に誓(ちか)った事、きちんと守れた一年じゃなかった。


 去年目標にしていた事が漸(ようや)く、最近形になって来た所だ。


 性風俗にも行った。女性のサーブするお店で飲んだ。


 洗濯と自炊くらいがまともになったくらいで、なかなか時間を守った行動も取れず就職活動も年末年始と事業所を見つけて頑張ってはみたが、駄目だったよ。



 今年、一番印象的だったのは父親を殴(なぐ)った事。


 母親の首をベルトで締(し)め上(あ)げた事。


 性のトラウマを兄に直談判(じかだんぱん)し、電話口でキレた事。


 そして最後に警察に拘留(こうりゅう)された事だ。


 なんにせよ、反抗的で、遅れてきた反抗期だったというか、抑(おさ)えられない気持ちが爆発した一年だった。


 父は殴(なぐ)っても蹴(け)っても私を息子として愛してくれている。


 母に白状(はくじょう)させ、私が中高生の頃から父はインポテンツだったとわかった。


 これで彼女と父との子供があの空白の20分か30分で産まれたという最悪の説はなくなりそうだ。


 でも、なぜ父は私の好きだった彼女の名を知っていたのか、疑問は残る。


 兄は私に対する性的虐待(せいてきぎゃくたい)など覚えていなかった。残念の極(きわ)みだ。


 殺してやりたいと綴(つづ)っていたが、忘れていることを責めるのも酷(こく)だろう。それに兄は自力で生活を立てている。私より頑張ってる。きっと悪気もなかったんだろう。潔(いさぎよ)く諦(あきら)めよう。姉の夫、つまり義理の兄にはチクれたし、何より自分で怒ってる事を意思表示できた。それで済まそうと思う。


 父が愛してくれていると書いたのは他でもないつい二日前の事だ。


 私が警察にマナーの悪い車を蹴(け)った事で逮捕(たいほ)され拘留中(こうりゅうちゅう)、何の迷いもなく示談金(じだんきん)10万円を振り込んでくれたおかげで、仙台南警察署内にある拘留所(こうりゅうじょ)から解き放たれ、10日ぶりくらいで娑婆(しゃば)に出られた。


 私は放蕩息子(ほうとうむすこ)で、就職もできない、障害認定(しょうがいにんてい)の落ちこぼれだ。


 でも、両親が息子として私を愛してるのは痛いくらいわかった。


 出かける時は財布(さいふ)に腕時計(うでどけい)にハンカチを忘れないようにした事くらいだったかな、それと簡単な自炊で節約はしてた。向上したのはそんな小さな習慣の変化だけだった。


 なんとかしようとしてたけど、パソコンも壊してしまったし、経済的に自立できる術(すべ)もほとんど失くしてしまったと半(なか)ば諦(あきら)めてる。


 出たり入ったりの繰り返し、特に素晴らしい資格もなく、もう32歳、月に使う10万円と固定費の家賃(やちん)諸共(もろとも)稼(かせ)ぐ手段は現実的に凄(すご)く少ない。


 私たちの人生は始める見通しがどうも、立たないようだ。


 それでも幻聴の世界で彼女と紡(つむ)ぐ幻想(げんそう)の日々は悪くない。


 二人で暮らしているかのようだった。


 父母より先に死なない。


 Tシャツの三部作のあと二作を生きてる間にどうにかネット上に遺(のこ)すのが私に残されたタスクになった。


 きっと何度でもまた失敗するんだろう。女性で、でもあからさまに騙(だま)されるような失敗はもうしないと思う。


 半(なか)ば女性を神聖視(しんせいし)してたのが侮蔑(ぶべつ)するような心持ちに変わって来たからな。


 女で失敗するのも懲(こ)り懲(ご)りだし、女にお金を捧(ささ)げるくらい馬鹿(ばか)な投資(とうし)は無い。


 やはり、魅力的(みりょくてき)に映る女性、そうでない女性と印象だけで判断してしまいがちな傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な自分はまだ心の中にいるけれど、マナー良くな。誰にも失礼の無いように生きて行こうと堅(かた)く心に誓(ちか)うよ。


 頑張れと書いていたがな、頑張ってはまぁみてみたはずだったんだが、頑張り損(ぞん)なんてもう絶対したくない。


 普通に暮らすよ。迷惑にならないように、迷惑にならないように、障害者だって自認して、嫌な人とは関わらず、あとわずかしか続かないだろう普通の幸せを噛(か)み締(し)めて、その後のプランは立っていない。


 もしかしたら生活保護まっしぐらかもしれないな。


 なんとか、良縁(りょうえん)を探す旅をこれからも続けると共に、自分の安らぐ居場所を探す放浪(ほうろう)を続けるしか無いんだ。


 ごめんな。でも、母にも父にも感謝できるようになって来た自分がいる。


 兄の事も許せてる。甥っ子の成長が楽しみだ。


 不甲斐(ふがい)ない、意気地(いくじ)のない自分で去年の自分に申し訳立たないが、これでこの一年を閉じようと思う。


 来年はどうしような。色事(いろごと)に負けず、貯金に精を出すくらいしか、する事が無いんだ。


 地道に頑張るしかないさな。


 架空(かくう)の世界を生きてた夢見がちで幼かった自分を置いて、周りから見ればもう立派な大人なんだから粗相(そそう)の無いようにな、丁寧に、静かに、ひっそりと、生きて行こう。それじゃあ。

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