気仙沼時代の過ち2 2015年11月19日(木)

 幽霊(ゆうれい)だけは怖い。あの歩道は家から川向(かわむかい)のY字路だった。


 死んだあの子が向って来たって思ったら見えそうになって、目を背(そむ)けてごめんなさいって言った。


 その子は死んだ時と同じように即座(そくざ)に許してくれたように思えた。



 W杯アフリカ大会を応援した時。応援してない奴を非国民(ひこくみん)め。と叩(たた)くのが流行(はや)った。


 というのは私の仲の良い悪友(あくゆう)たちで、応援してた時の合い言葉みたいなもんだったんだ。


 声色(こわいろ)や言い方を変えて想像していただければ、悪い冗談(じょうだん)だって分かる。


 今も書いてて思い出し笑いが吹き出そうになって困った、困った。



 でもそれを言われて傷ついた女性がサッカーを応援しないからって日本人じゃないって言われたって読んだだけで悲しい気持ちは伝わって来るものだったのに得意になってその言葉に被(かぶ)せて非国民めってTwitterで呟(つぶや)いたんだ。



 そしたら人身事故(じんしんじこ)で電車停止(でんしゃていし)の連絡が入った。タイミング、ドンピシャリ。私が殺したも同然(どうぜん)なんだ。


 遺族は何が何だかわからなかっただろう。追いかけて来て家の二階に住んだことがある。


 その、本当に人を殺したいと言う気迫(きはく)と、それでも私を殺さないで住んでた今となっては横浜ナンバーってしか覚えていない車に乗ってる家族たちは1年くらいで帰った。



 こういうどうしようもないこと。忘れてしまった時が来たら自分が死ぬ時だと思うから、今のうちにここに書き残しておくことにする。

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