勇者の正体見たり

「チサちゃん、やっぱり加勢したほうがいいかな?」


 ボクはチサちゃんに聞いてみるが、チサちゃんは首を振る。


「やっと、ネウロータが気づいた」


 チサちゃんは、勇者の秘密に気づいたらしい。


「おりゃあ!」


 ネウロータくんは、前のめりに攻撃を避ける。そのまま、勇者の影にモリを撃ち込んだ。


 勇者エレクチオンが、大きく身体を仰け反る。肉体が崩れ、白鯨イドの全貌が明らかになる。


 なんと、巨大な勇者が白鯨イドに化けていたのだ。巨大トシコさんに膝枕されながら、クジラに擬態していたのである。


 トシコさんを襲い続けていたフジツボドローンも落下し、一気に弱体化した。


「それがお前の、本題だったんだな?」


 ネウロータくんが、地面に着地する。


「おかしいと思っていたんだ。なんで白鯨イドが玉座の方なんだ、ってな!」


 白鯨イドは、勇者の先祖なはず。しかし、白鯨イドはトシコさんに変わっていた。


 それで、ハッとなったという。


「トドメだ!」


 ネウロータくんが、モリを構える。


 トシコさんが後ろに回って、同じように矢を構えた。


 二人が同時に武器を放つ。


 ネウロータくんのモリが勇者の、トシコさんの矢は玉座の心臓へ突き刺さる。


 ドドド……と激しい地鳴りとともに、勇者たちは光の粒となって天へと昇っていった。


「ふーう」


 さすがのネウロータくんも、あぐらをかく。全力攻撃を連発したせいか、ぐったりモードだ。


「トシコさん、悪いんだけど」

「はいはい。遠慮しなくていいのよ」


 勝手知ったるトシコさんが、ネウロータくんに膝枕を許可する。


「行こうかチサちゃん」


 ここは、二人きりにさせておこう。


「ネウロータ、決勝で」

「あー。それまで負けるなよ」


 手をヒラヒラとさせて、ネウロータくんがボクたちを見送った。


「じゃあねダイキさん、チサちゃん」


 トシコさんもネウロータくんをあやしながら手を振る。


~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 


「あいつら、マジで勝てるよな?」


 ネウロータが、トシコに語りかけてきた。


「大丈夫よ。あの二人しか勝たないわ」


 確信を持って、トシコは返す。


「今度の相手は、ダークホースだぜ。誰もあいつが勝ち上がるなんて思っていなかった。ただの人間だった魔王候補が、もし人間をやめたら……」

「そうね。ダイキさんでは耐えられないかも」


 それでも、負ける気がしなかった。

  

~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ 


「いよお、待っていたぜ」


 次の挑戦者は、人間の魔王ヨアンさんと、ヴァンパイアの玉座ククちゃんである。


 しかし、様子がおかしい。


 ヨアンさんは、まるで別人だった。特攻服を着ている。


 まるで、彼女と敵対していた神の王座、【ハメルカバー】そのものじゃないか。

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