ネウロータの本気

 現れたのは、正真正銘のネウロータくんだった。


「ぼくの出番だな!」


 地面へと着地して、ネウロータくんが勇者を睨む。


「うふふ。私たちの名を語って、無事で済むと思わないことね」


 トシコさんも、ニコニコ顔で弓を構えた。笑顔が怖い。


「なにより、我が父【白鯨イド】を穢した罪は重いぜ!」


 ネウロータくんが突撃した背後で、トシコさんが三本同時に矢を放つ。


 矢はネウロータくんの身体をちょうど死角にして、白鯨イドに突き刺さる。


 どうやって矢をつかんでいるんだ? 指の間に複数矢じりを挟んで、逆手持ちにして撃っているのか。


 しかし、白鯨イドには効いていないようだ。突き刺さっている矢を、気合だけで弾き飛ばす。


 反撃とばかりに、白鯨イドがシッポで衝撃波を飛ばしてきた。


「うわあ!」


 衝撃波は広範囲に届き、ボクたちにまで襲いかかってくる。


 チサちゃんがバリアを張って、衝撃波を弾き返す。


「やっぱり、フルパワーでないと倒せないか。トシコ、合体するぞ!」


 マミちゃんに続き、ネウロータくんにも変形モードがあるのか。


「OKよ。融合!」


 ネウロータくんの後ろから、トシコさんが抱きついた。


「この変身バンク、恥ずいんだよなぁ」


 やや、ネウロータくんは赤面しているように見える。


 二人は、光に包まれた。

 シルエットを見るに、二人共ハダカになったようである。


「チサ、見ててくれよ。ネウロータ、ここにありってところをさ!」


 ネウロータくんの姿が、バイキングっぽい衣装へと変わった。

 手には、モリのようなライフルを構えている。


 トシコさんも、人魚の姿になった。まるで、ボクの仲間であるベルガのようだ。ただ、ベルガと違って巨乳なので、貝殻ビキニは弾け飛びそうである。


「この衣装、心もとないわね」


 さすがにトシコさんも気にしているようだ。


「ダイキくん、ここは私たちに任せてね」

「うん。トシコさんもがんばって」

「うふふ。じゃあ、見守っていて。ネウロータくん」


 トシコさんが、身体を低くする。その背中に、ネウロータくんが乗っかった。


「重くない、トシコ?」

「平気よ。私は、あなたの玉座なんですもの」

「頼もしいな。行くぞ!」


 バイキングとなったネウロータくんが、勇者とイドに立ち向かう。


 海に潜るかのように、トシコさんはゆうゆうとフィールドを泳ぐ。


 体格差は、一〇倍以上はある。なのに、ちっとも負ける気がしない。


「白鯨イドは、言っていた。『体がデカいことが、強さの象徴ではない。大切なのは、心のデカさだ』ってな!」


 ネウロータくんが叫び、トシコさんが速度を上げる。

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