◯ックスしないと出られない部屋

 エィハスと別れて、ボクたちはダンジョンを進んでいく。


 今までのダンジョンと比較して、落ち着かない。照明が終始ピンク色なのも、不安を誘う。


「アレ」の形をした意味深な像や、女性の裸体を模した石像などが並ぶ。入り口も、いかにもな形だったし。壁もイボイボなのだ。


「これは、【秘宝館】だね」

「ひほうかんって?」

「チサちゃんは、わからなくていいよ」


 コドモの教育に悪い。いつかは覚えないといけない知識なのは、確かだ。でもちょっと、チサちゃんにはまだ早いかなぁ。なんて教えてあげたらいいのか。


 しかも秘宝館なんて、結構アブノーマルだよ。性の知識が歪みかねない。


「壁にレバーのようなのがたくさん。ビクビクしてる」


 たしかに、何本ものレバーらしきものが、横一列に並んでいた。OH! よく見るとそのレバー、モザイクが掛かってるじゃん!


「チサちゃん、それは触っちゃダメだよ! バッチイからね!」

「……? 隠し扉のスイッチかも」

「ないない。それは、チサちゃんが触ってもOKなものじゃないよ。離れよう」


 そそり立つレバーをさけながら、ボクらは先を急ぐ。


「こんにちは」


 壁に持たれている何者かに、チサちゃんは話しかけた。


 返事はない。ただの……なんだこれ?


「等身大の人形人形だね」

「顔が、アヒルのおもちゃみたい」


 言われてみれば、よく似ている。


 しかし、これもヒワイな商品の類みたいだ。関わらないようにしよう。


「ダイキ、隠し扉の気配」


 チサちゃんが立ち止まった。


 壁に、赤いボタンがある。


 各通路を渡っても、他に道はない。階段らしきものも、見当たらなかった。ここがゴールらしい。


「開けてみようか?」

「うん。ワナかもしれないけど、そんな感じでもない」


 チサちゃんが言うには、ここにはボスらしき気配はないという。

 しかし、なんらかの試練をクリアするタイプかも、とのこと。


「行こう」


 どんなトラップがあるかはわからない。しかし、突破しなければ先はないんだ。


「押すね」

「うん」


 チサちゃんがボタンを押すと、壁がゴゴゴ、と音を立ててズレていった。


「なんだなんだ!?」


 壁がひとりでに動き、ボクとチサちゃんを取り囲む。


 隠し扉の向こうは、寝室だった。


 照明もピンク色のままだ。


 出口らしきものに書かれた文字を、チサちゃんが読み上げる。 



「◯ックスしないと出られない部屋、って書いてある」



 うわあ、頭の文字が消されている段階で、悪意しか感じないよ。


「ごきげんよう、チサ様、ダイキ様」

「ああ、セイさ……セイさん!?」


 ボス部屋を担当しているのは、セイさんだった。

 しかし、ボンテージ姿である。 

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