魔法少女との「永遠の」別れ

 エィハスが作ってくれたのは、意外にもお茶菓子だった。

 クッキーやケーキが、テーブルの上に並んでいる。


「疲れただろう。好きなだけ、ゆっくり休むといい」

「すると、エィハスが」

「ああ。私は回復所の番人役だ」


 なるほど。だから、付き添ってくれていたのか。


 みんなで水場で手を洗い、いただきますをした。


「すごい。エィハスってなんでもおいしく作っちゃうんだね」


 おいしさだけじゃない。体の疲れがなくなっていくのも感じる。


「気に入ってもらえたら、なによりだ」


 エィハスが、照れ笑いをする。


「そうそう。あなたたちも、こっちの世界に残ればいいのにー」


 アーデルハイドが、妙なことを口走った。


「それはできない。わたしたちは、魔王になるために旅をしている。ここで立ち止まるわけにはいかない」

「だったら、引き止められないわねー」


 やけにあっさり、アーデルハイドは引き下がる。


「今日は楽しかった」

「ワシもー。さよならー」


 ボクたちは、アーデルハイドと別れた。


 しかし、エィハスはまだ話があるという。


「ありがとう、ダイキ、チサ。おかげで、アーデルハイドも悔いはないだろう」

「ちょっとまって、何があったの? アーデルハイドって、なんか悪い病気なの!?」


 病を押して、ボクたちと会うためにムリをしたとか?


「違う違う。彼女はいたって健康体だよ」


 エィハスが、ボクの誤解を解いてくれる。


「けれどお前たちはおそらく、あのアーデルハイドとはもう会えない」

「そうなの?」

「ああ。そういうルールらしい」

「まさか、また邪神のせい?」


 あの子は邪神のパワーを受けて、魔法少女になったって言っていた。

 その強大な力に耐えきれなくなって、消滅してしまうって設定じゃないだろうね?


 しかし、エィハスは否定する。


「そうじゃない。むしろあのアーデルハイドに、お前たちを会わせたんだよ。少なくともラストダンジョンにおいて、彼は決して悪党ではないよ」

「と、いうと?」

「お前もすぐに知るだろう、ダイキ。このダンジョンが、いったいどのような構図になっているのかを」


 意味深な言葉を、エィハスは告げた。


「わかったよ。答えは自分で見つけることにするね」


 解答を聞くのは簡単だ。しかし、それじゃ意味がないんだろう。

 だからエィハスは、あんな伝え方しかできないんだよね。


「私が告げた言葉の意味は、いずれわかる。これは警告じゃない。しかし、アドバイスでもない。私は事実を伝えただけだ。事実を知って、考えるのはお前たちだからな」

「心得ておく。ありがとうね。楽しかったよ。エィハス」

「私も楽しかった。それじゃあ、またな」


 ボクとチサちゃんは、エィハスたちと別れた。


「エィハスは、またなって言った。アーデルハイドは、さよならって言ったのに」

「うん。なにかありそうだね、チサちゃん」

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