第134話 別れと再び

 月日が経過して三年、約束の時は来た。


 少年王に挨拶した、可愛いヨーンと一緒に別れを寂しがっていた、ヨーン、お前がこれから支えてやれよ?心強いお返事、しっかりした子で良かったよ。


 ギルドはスルーあんまり思い出もないし、一度上級ダンジョンに行って、初めて会ったテイマーさんとギルドのおねいさんに別れの挨拶も済ませた。


 

 お店ではお別れのパーティーが開かれた、常連さんたちが泣いて別れを惜しんでくれました、もちろん俺達だって寂しいよ?



 ヨーンとヘールストレーム、二十匹にも増えたチビッ子達にも挨拶、最後の夜は皆で団子になって寝たよ、一匹くらいチビッ子連れて行こうかなーとか思ったらみーちゃんに怒られた。



 最後の朝、マドロンさんがギュッと皆を抱き締める、泣いてるのは分かってる、副店長は二号と結婚までして、子供が一人、ヤンチャで賢くなさそうなのが心配です、どーせスパルタで育てるんだろう、ヤンチャで居られるのも今だけよと心の中でエール。


 みーちゃんは最後だけ副店長にスリスリして仲良しになったお別れの挨拶、鬼の目にも涙だがそれも見ない振り。



 何時までも離さないマドロンさんの腕をポンポン、そろそろ行くよ?


「きゅーちゃん……皆も……バイバイ!」



 地面に下ろしてもらう、最後で最後の挨拶。



((飼い犬生活有り難う、マドロンさん、副店長、皆も、俺たちは何処に行っても元気で生活するからさ、皆も元気で過ごしてよ?))



 転移の準備、マドロンさんも副店長も店員さんも驚いた顔をしている、ふふふ。


「皆さんお世話になりました、きっと神様が皆さんを見守って下さるでしょう、宜しくお願いしますね?アドリアナ先輩?」


(……分かってるよ!みーちゃん……皆も元気でやれよ?犬もちゃんと幸せにしよろ?……バーカ!グスッ)



「ふははっ……やっぱきゅーきゃん達は特別だったんだね……っ何処に居ても忘れないから!!」


 おう、忘れんなよ?此所にいたって証。



 転移の魔方陣が光る、ポンコツに抱えられて皆で転移、じゃあね?


「さようなら、ワンコさん……」


 副店長の涙を見てしまった、不覚……


 スゥーと魔方陣に吸い込まれる。



「皆っ!!バイバイーー!!」


 泣くなよー!マドロンの馬鹿!


 フェードアウト……バイバイ皆。









「ウウッ!居なくなっちゃったよ……」


「ふふ、神様の愛し子……ですね。」


「わずれないよぉー!きゅーきゃん!!」












 ふっと目を開ける、見覚えのある鬱蒼とした森の中、目の前にはベスと過ごした洞窟。


 戻ったような、懐かしい様な感覚。


「きゅい」もどってきた……


 そうだね、そーちゃんとは此処で出会ったもんね?


「ミィー?」ここがつぎのせかい……?


「ピッー」さ、さばいばるっ


「此処が……初代の世界……ですか」



(あらあら、思ったより早く戻ったのね?可愛い子達、そして、四代目のポンコツ神様、この世界マルガの神様のモナストイルスキーと言いますのよ、宜しくお願いしますね?)


「ピ」ながっ


 モナでいいって、又宜しくー。


「ミー」もなちゃ、よろしくなのー


「ああはは、ぼ、ポンコツ四代目のミネルバですぅ……お邪魔します……。」


「きゅい」よろしくー


(あらあら、ふふ、好きに過ごしてね?)



 おう、暫くここの洞窟で生活に慣れようね?



 森には野生の動物がわんさか居る、気配を隠して、迷彩をすれば動物位は楽勝だろう。


 さて、皆、これからサバイバルの練習だよ?攻撃魔法はなるべく使わない、生活魔法もあまり使わない野生の生活に近い暮らしに慣れてもらう、飼い犬もいいけど、他の星でも同じような環境があるかもしれないから。


「ピー?」ここにはどれくらい、すむの?


 そーだね、ここの猫族なんかは俺たちとそう寿命が変わらないから、数十年は居られるよ?


「ピー」かねは?


 亡者よ、金貨の山は用意出来る、それで我慢しなさい!


「ピーィ」ねどこは、それでいい……


 んな訳ないでしょ!ちゃんと毛布で寝るの!


「きゅい」そーもここは、あんまりけいけん、ないから、にぃにについてくー


「ンミ?」そうなの?


「きゅい」そうなの、きがつたらここにいたの


「ミィー!」ならいっしょにがんばるのー!


 ほら!ぴーちゃんも見習いなさいっ


「ピ」チッ


「私はどうしたらいいんですかー?」


 人間はここじゃイレギュラーだからなーどうしよう?洞窟で待機?


「何もしなくていいんですか?」


 だって、何が出来るの?火起こせる?


「生木は駄目!なのは覚えてます!」


 それだけかよ、料理とか捌くとか出来るの?


「え!料理……したことないです……」


 知ってる……でも覚えようぜ、俺たちの食事も暫くはサバイバルで得た肉になる。


「ンミ?」かんづめ、だめなの?


 なるべくこういう環境を少しは楽しもうよー?結構楽しかったよ?


「ミッミッ」やるのっやるのっ


 やるの?殺るの?バーサクにはならんでね?



「お料理……お料理……?火を炊く!水?うーん……うー?」


 ポンコツにはあんまり期待出来そうにない、人間が使えない環境も考えないとなー。


「きゅい?」どうやってえもの、さばいてたの?にぃにがやってたの?


 それなー……実は手使えないからベスに頼んでたんだよ、だからなるべくポンコツが使えるようになってくれないと困るのぉ。


「きゅい」にんげんにたよらないって、いったよね?ぽんこつは、いいの?


 あー言えばこー言う!ポンコツは人間じゃないでしょ?神様なんですぅー!


「きゅい」くるしまぎれー


 だまらっしゃいぃ!


 皆で森に入りますよー?ポンコツは生木じゃない乾いた木を集めろよ?


「あ、あいさー!」


 ぴーちゃん!不貞腐れてないで行くよ?


「ピー」まほうあるなら、つかうべきー


「ミッ」ぴぃ、つかえないときも、にぃにはかんがえてるのっいくの


「ピィ……」ねぇねー……わかったし



 んもう!我儘な子達ねっ!


「きゅい」だれに、にたのかなー


 さぁ行かん、森の中へと!


 皆で気配を消して、迷彩も準備、初めて迷彩が戦闘で役に立つ!ドキドキ。


「きゅい」にぃに、めが、らんらん


 シマッタ!目は迷彩にならんのだ、薄目にして気配を探る、此処はへんは猪が多いんだよな、奥に行くと熊が多くなる、縄張りだな。


 ピョンと背中にみーちゃん合体、いや、ビックリしたし!犬肌出たのは内緒ですぅ。


「ミ」みえないの


 あ、そうか小さすぎるのも問題か……


「ピッ」みえないから、さぼる


 おいヒヨコ、良い事閃いたみたいに言うなよ、頭乗っとけ!にぃに許しません!


「ピー」やれやれー


「きゅい?」このくうき、がったい?


 まぁどっちでもいいんですけどね……



 取り敢えず今日の課題は猪一匹ね。


「きゅい?」ひきなの?とう?なの?


 そういうややこしい事は何でも匹でいいんです、先人が勝手に分けたんだからこっちも勝手にするわ!文句なんて言わせない!


「きゅい」めんどうなんだー


 そういうことー


 ほら、猪が来たよ、誰が突撃する?


「ミッ」みぃがいくのっ


 おおー……爆発はやめてね?手抜いてね?


「ンミ」わかったの


 さっと降りて迷彩に気配を消して近づいていくみーちゃん、ブヒブヒ臭いを嗅いでいる猪に近づく、白い弾丸になって腹に突撃、ブモモオオオっと悲鳴を上げる猪がバタリと倒れる。


 様子を見る、まだ生きてるかもしれない。


 みーちゃんが近づいても反応はない、ツンツンつついても動かない、ナイスみーちゃん!


「ンミーッ」やったのーっ


 尻尾をフリフリさせて戻ってくる、猪は空間庫に仕舞っている、天才っすね!


「ミッ」にぃにほどじゃないのーっ


 おしー、今日は体験だからこれで帰ろう、いいかい?森の中では帰りも油断しちゃ駄目よ?ベスはそれで怪我したからねー。


「ピー」つかえないねこか


 本人目の前にして言わないでね?あれ一応王子様だから?


「ピッ!?」おうじ!かねのにおい!


 いや原始的な世界で金はない。


「ピー」どこまでもつかえないねこだ……


 文句言うんじゃありません、慣れれば楽しい所ですよ!まさに弱肉強食の世界!


「ミッー」やきにくていしょくなのー


 そうだよー?ほら、洞窟でポンコツが火を炊いて待ってる様な何もしてないような?


 皆で洞窟に戻ると、何本かの枝を床に置いて何もしてないポンコツが居た、おぃ火は?


「え?魔法は駄目なんですよね?どうやって火を付けるか考えてましたー……」


 俺は最低限と言ったんだ、火の魔法位は使って良い、水もな、生きる上での最低限だ。


「そーなんですか、なら火着けます!」


 と、枯れ枝にボッと火が付く、枝ってそれだけなの?追加ないと消えるジャン?


「え、あ、拾って来まーす!」


 ……大丈夫なの?この面子……


「ピー!」なんでぴぃもいれたし!


 いやーなんか不安になってきたー。


 ポンコツが枝を拾って来たので次は剥ぎ取りの練習だ、ポンコツ!ちゃんと覚えろよ?


「が、頑張りますっ」


 と、言ってから三時間経過、未だに半分も出来ていない……皆飽きて寝てるし……。


「はふぅー……難しいですね!」


 そうですね……説明する俺も飽きてきたよ


 このままだと晩御飯に間に合わない……



(ふふ、面白いわね?……なんなら剥ぎ取りの魔法でもあげましょうか?四代目さんは何時になったらマスターするのか解らないわね?)


 な、ナンダッテー!そんな便利なものがあったんすかー……てことはポンコツにはない訳だ、いいなー欲しいなー?チラッ


(ふふ、では同郷のよしみで特別よ?)


 わーい!モナさん素敵!


(これからも面白いもの見せてね?)


 俺達の普段が面白いなら毎日面白いんじゃないだろうか?……



 てな訳で剥ぎ取りという魔法を貰いました!


 猪に!剥ぎ取りー!と念じてみると、ポワッとしてから綺麗に解体されてました。


「ほわー!初代さん凄いですぅ!」


(早く見習い卒業するといいわね?)


「あ……はぃ……」


 永遠の見習い感パネェー。

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