第128話 帰ってきたよ

 何だ、やっぱりマトモに喋れるじゃん?


 



 目を開けると月明かり、夜だ、前方には広い森、何でそんな所で寝てるの?毎日そうしてた?小屋で眠らないの?


 

 みーちゃん、ぴーちゃん?


 

 バッと姉妹が振り返る、驚いてる、はは、そんな顔も可愛いのが、変わってないね?


「ミィァ……」ほらねぴぃ、しんじてまつといいこと、あったの……


「ピァ」ほんもの?ほんもの?ゆめみてる?


 

 姉妹が固まって動かない、動いたら消えそう?そんな事ないよ、トテトテ歩いてく。


 やっぱり歳はとらないね、五年も経ったけど、にぃにも変わってないねでしょ?もうこれが完成形だからね?


 みーちゃんをペロペロ毛繕い、何時までも懐かしい赤ちゃんみたいな匂いの子、目を細めてウルウルしてるお目目、懐かしいね?


 ヒヨコにケツキックされた、変わんないじゃん!潜り込んできたぴーちゃんもペロペロ、ぴーちゃんは美味しそうな匂いがする、鶏だから?「ピッ」ふざけるな、ちゃんとしろっ


 はいはい、すいませんね!にぃに、心が疲れたの、記憶まで無くすとは思わなかったけど、むこうの世界では半年だったんだ、此方が五年も経ってるなんてね?予想外です。


「ンミゥ」もういいの、かえったのにぃにがいるの…………いるの……すやぁ


「ピィー」ねぇねのゆめにでて、なんでぴぃのゆめでないんだ?ゆるすまじ


 ヒヨコの印象向こうじゃ薄かった、正直すまんかった、猫族なんてのに拾われたから?


「ピィーピ」しかたない、ねこぞくとかむねあつ、あしたはなして……おやすみ


 腕のなかで寝てる二匹、俺には半年ぶりでも此方は五年もか……他の皆がどうなってるのか怖いです……お店がまだあるのが救いだ。


 朝まで毛繕いしてた、ベスにはしなかったしね、する相手居なかったし。でも、さすがに眠くなってきた……すやぁ……



 頬をツツかれてる、何だろう……と、黄色の団子……団子なのに鶏肉の匂い?


「ピッ!」くいものじゃない!ねぇねがけんか!


 喧嘩まだしてるの?ぴーちゃん……


「ピー」ごねんもけんかしない、ねぇねと、なにかがけんか、してるー


 何かってナニよ、ぴーちゃんとの喧嘩は終わったんだね、良かったよ……


「ピ!」おきろ!ねぇねが!けんか!


 はっ!!みーちゃんが!?誰と?


 前方でみーちゃんと向かい合ってるのは……そーちゃんだ、え?何がどうして?


「フシャー!」にぃにのせなかは!みぃの!ゆるせないの!だれなの!


「きゅるー!」だからーにぃーのこころから、うまれた、いちぶ……にぃーとおなじにおい!するでしょ?


「ミニャーシャッ」するの!それがゆるせないの!せなかもみぃのいばしょなの!!


「きゅいー?」よろこぶかとおもったら、ちがったどうしょう?にぃー……


「ピィー」ひたいの、ほうせき、いいね?


 考えてた構図と、逆だった……


 みーちゃん?お、怒らないで?そーちゃんは俺の一部でね?思い出すのに協力してくれたんだよ?居なかったら思い出せてなかったかも!


「ミッ、ミゥミァッ!」それはかんしゃなの、でも!せなかは!みぃのっ!


 あーもしかして姉妹にも、順位が、ある?


「ピ?」あるよ、あたりまえ?


 そーなんだー、ってことはそーちゃんは三女だから、末っ子が長女の場所取っておこ?


「ピー」それが、やきにくていしょく


 そーちゃん!みーちゃんもおいで!


「ミッ!?」あと?このこの、あとなの!?


 やべぇ呼び順も重要らしい!


 いやいやいや、先にみーちゃんって呼んだよ?聞き間違えちゃったの?


「ミゥ?」そうだったの?


「きゅる」そうなの


「ピピー」ねぇねが、さきだったー


 ナイスフォロー!


「ミー」かんちがい、ごめんなの


「きゅる」ねぇねのばしょだってしらなかった、ごめんなさい


「ミィ?」しらなかったの?ならいいのー


 チョロすぎません?心配です、はい。


 二匹が並んで此方に来る、みーちゃんすっかり喧嘩は忘れてる様だ、大丈夫か?それ。


「ピピー」けんかがとらうまー


 ぐぅ!俺のせいだった……


 みーちゃんがピョンと背中に乗る、伏せなくても乗れる様になったんだね?偉いね?


「ミゥ!」にぃにをこまらせないの!


 あうあうあーあ互いトラウマやんけ!


 ぴーちゃんは足蹴って催促、頭を下げる、やっぱり鼻踏んでから頭に、か、変わらねぇ!


「きゅる?」どこ?のればいい?


「ミァ?」みぃのせなかでいいの?


 無理だよね?そーちゃんのが倍は大きいよ?


「きゅる」わかったーちいさくなる


 クルンと、空中回転で降りた時にはみーちゃんより小さいサイズ!?ま、マジック!


「きゅい」そーはおもいでの、かけら、にぃーの、じゆうじさい


 え?そーなんですか?思考の形って事ですか?成る程ー。


「ピッー」ほうせき、ちいさくなった……


 変わんないヒヨコだよ、まぁ安心。


 みーちゃんの背中にそーちゃんが乗るけど重くないの?みーちゃん?


「ミ?」なにものってないの?


 そーちゃん乗ってるよ?


「ミッ!?」ほんとなの!びっくりなの!?


「きゅい」おもさも、じゆうじざいー


 取り敢えずビックリしない位は重さ乗せてあげてよ、毎日ビックリしそうだよ?


「きゅる」わかったー



 あっ探知に人間の反応!と、この匂い!間違いない大魔王降臨!


 カチーンと固まって待つ、姉妹は怖くない様子、マジか、俺にだけおこが降ってくる。


 ザッと裏庭に副店長……驚いた顔を一瞬してから笑顔になった。


 …………ナンテ?


 ふはふふふは副店長が笑顔なんですけど!


「ピー」おちつけ、きもちはわかる


 ぴゃー!何かの始まりで終わりですか!!


「ワンコさん……やっと帰ったんですね?姉妹を泣かせるなんて悪い子ですね?」


 輝いてるよ笑顔が!どうしたんだよ!


「なんですか?ワンコさん?私が笑顔になったからって何か問題でも?」


 あ、ナイデース、ナイススマイル。


「帰ってきたなら挨拶しないと、皆さん心配ずっとしてましたからね?」


 はい、すいません!します!します!


「ピ」へこへこすんな


 なんでよ!?何で怖くないの!?


「ピピー」あとでわかるさー


 何よ、何かが起こっているらしい……



 朝、皆が出勤だったり、ヨーン達のご飯だったり、庭は賑わっていた、シャレではない。


 なんと?元勇者達が表舞台に堂々と仕事してるじゃない!?これが五年か……


「うあー!!!きゅーちゃんがああああ!」


 五月蝿いのは相変わらずのマドロンさん、ダッシュで来るが!させん!交わす、そして、ヨーンにダイブ!久し振り!!


((ぼ!ぼすだ!!ボスが帰ったんですね!!))


 すまんのー皆に迷惑掛けました。


((ボスぅ!無事でよかったっですー))


 おう、ごめんよ、ヘールストレームも元気だな?二匹も変わんない!


((ボスが帰るまで大変だった……))


 何が?


((みーちゃんと可愛さの練習をずっとさせられてて……俺達カッコいい系なのに!))


「ミッ!ミッ!」たるんでたの!かわいくやるのがせいぎなの!


 おう、みーちゃんがスパルタだったなんて。


「きゅーちゃん!!飼い主!飼い主!」


 へぇへぇートテトテどうぞ?


「へへっ良かったよ!変わんないね?可愛いのが増えてる……なんぞ?」


「きゅーちゃん……私の愛し子……です!帰ったの知ってたけど姉妹に譲りました!」


 ポンコツは神様だから当然変わらないけど変わった人が居るの怖いの!


「きゅーちゃんが震えてる、何で?」


「変わった人が居るの?居ます?」


「ああー居るでしょ……よしよしー怖くないの、もう安心して?」


 マドロンさんがナデナデ、安心ってナニを安心すれば良いんですか?


「わんわんわんっ!!」「きゃんきゃん!」


 え?庭にちっちゃいワンコの群れが……何があったの?普通に見える犬なんだけど。


「ほら、可愛い犬ずっと探してたんだって、副店長と三号さんがね、二年前に山奥でこの子達飼ってるブリーダーの夫婦が居てねー?」


 ほう?


「で、何か勇者さん達と似てる顔立ちだったんだけど、否定されてね?」


 あ、生きてたんだ?此処で召喚された勇者のかっぽー、結婚までしてたんだ。


「三号さんと副店長がそら熱心に欲しいアピールしてね?二匹貰って繁殖したのよ。」


 何だろう近いのはチワワかな?コロコロ遊んでる、十匹位は居るよね、可愛いの!


「もうね、荒んでたの、二年前まではもうきゅーちゃんいなくて……でも今はもうアレよ?人が変わりすぎだと思うけど、おこモードはたまに出る位になって、お店も繁盛よ?」


 おおっ!!何て素晴らしいのだ!


「ミィミ」だからかわいさに、まけないよう、とっくんしたのー


「ピー」ねぇねがもえてた、おにぃのわるいとこ、かわいさはせいぎ



 そ、そうっすね、そんなん拾った時から言ってたかな?ははは……


「店長独り占めずるいです、私も!」


「あーはいはい雑用さんも我慢してたもんね」


「そうですよー私の大事な子なのに……」


 おう、ポンコツ、済まんかったな、モナに止められてたんだろ?


「そうです、初代が我慢しろって……」


「もーそうやって見せびらかす!飼い主は不満ですー!」


 もう!皆がわちゃわちゃしてるよ、新しい犬達も皆でグルグル。


「ミ、ミィー」にぃにやくそくやぶったの、はなれたの、もうなはれないのー


「ピッ」ひっつきむし、ずっとするって


 そうだね、にぃに、約束すぐ破った、本当にごめんね?


「でも一番驚いたのは、二号さんだよね?」


 何が?


「副店長とお付き合いしてるの」ヒソヒソ


 え?三号じゃなくて?猫派の二号だったの?


「そらもう、可愛い犬が居て彼氏も出来ちゃって、ニコニコよ?逆に怖いけど……」


 人がこうも変わるのを見るのは稀だ……


(まぁあたしは宇宙の心配してましたー!)


 はいはい、すいませんね!


(ったく!どんだけみーちゃんに責められたと思ってんの!?馬鹿犬が!)


 反省してますー土下寝で勘弁。


「あ、誰に謝ってるの?皆に?つーかみーちゃんの背中の子何……」


「あ、きゅーちゃんのかけ「きゃん?」じゃなくて、新しい妹?みたいでふ、へへへ」


「……あ、そうなんだ?かけ、が気になるけど、美人な子だね、宝石まで付けて?」


「きゅる」よろしくーかいぬし


「何か…きゅーちゃんに似た香りがする」


 気のせいだよ?

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