第111話 動物の遊具作り

 拡張した裏庭のドッグランはヨーンや姉妹を考えると無理があるだろうから、アスレチック?子供用?を元勇者が話し合っていた。


 何だかんだで悪事も忘れて健全に生活をしているのを見ると、勇者ってもんの異質さが浮き出るな、チートは程ほどが一番よ、とか言いつつ、自分が人間になって勇者召喚されたら、きっとチート!チート!って言うなって思うわ。


(人間の業の深さ……深い!)


 溺れとけ。




「ちょー何でよ?私も参加してもいいでしょ?店長だよ!?」


「では、何か一つでもコレという物が思い浮かんだら参加もさせましょう。」


「おうハードル高い!でも考えてくる!」


 結局思い付かないに一票。


「さて、グズ達、アスレチックとやらに取りかかりますよ、まずはワンコさんのアイデアを作ります、いいですか?」


「「「あい!まむ!」」」


 おお……何だか涙が出そうで出ない。


 俺の案はテレビの情報でしかない、なので、単純に滑り台だったりする、遊具じゃねーか?って?だがしかし!俺のアイデーアを取り入れた斬新な滑り台だ。


 滑る坂は木の棒を横に並べて滑り落ちる奴、それだと普通の運動にならんから、かなり高くして階段を高くするっていう、斬新さ、滑る恐怖が襲うんだ……こわぃ。


(自分で使う気ないのか!)


 俺はまだいい。ヨーンが滑るというより、転がり落ちるってイメージしか出来ないよ!


(真剣にかんがえろー!)


 あ、後ねプチコーヒーカップ!くるくる回るの、んで姉妹できゃっきゃうふふーってするの、楽しみです!


(欲望のが色濃いなっ)


 九十九パーセントは煩悩、残りは優しさで出来てるんですぅ!


(ほぼ欲望の塊だな、いっそ清々しい。)


「このコーヒーカップ?は場所を取るので却下します、まずは滑り台とやらを作りましょう」



 即却下!えーん!俺のうふふーが!


「滑り台を高くするのはどうなんでしょう?危険だと思うんですよね、ヨーンはヒール持ってないですから、三兄弟が居ないときに大怪我でもしたら大変じゃないですか?」三号


「成る程……しかしこれはいいと思うのですよ、さぁ貴方たちの故郷の遊具なんでしょう?考えなさい。」


「へ、へい!」「らじゃ!」「うーん?」


 ううー俺のアイデーアが却下されまくり!たかが遊具だし!


「ミィミ」いっしょにあそべれば、なんでもいいのーたのしかったらいいの


 背中に張り付いたみーちゃんが背中から俺の頭をヨシヨシしてくれる。泣きそう。



「あっ!螺旋にしたら良いんじゃ?高さはあるけど支柱を中心に回って滑るから緩やかになると思うんですけど、どうでしょう?」一号


「階段は一直線ですか?」


「え、う!」


「なら、いっそ階段も螺旋にして滑り台と沿う形にすれば、滑る子とかとすれ違う時面白いかな?と思います。」三号


「成る程、それで行きましょう」


「「「あい!まむ!」」」


 元勇者っ俺の思った滑り台は却下されたが、なんとか滑り台になった!せんきゅ!


 こうアスレチックって少学校の校庭程度しか思い浮かばないんだよねー、登り棒とか、タイヤの何か?ブランコも書いたけど却下だろうな……なんとかせいや!元勇者!


「……ワンコさんの世界ってアイデアが溢れてますね、魔法の有る無しでこうも変わりますか、どうやって生きてるのか謎です。」


 何で何時も誉めて落とすの!生きてるわ!


「あら、ワンコさん、抱っこしてあげましょう、おいでなさい?」


 ひぃぃぃっ!みーちゃんと一緒に震える!


「心外です、誉めたのに。」


 珍しく不貞腐れたので、抱っこして貰います、モフモフというよりワフワフ?なぬいぐるみカットは手触りも良いらしい、ワフワフ感触を楽しみながら触ってる感じ?わふわふって何だよ……フワフワとは何か違うんだもん!


(何一人で言い合ってんの?器用だし?)


 へへっ誉めてもビンタしか出せないぞ!


(店長レベルのご褒美とかいらないしっ!)


 みーちゃんには触れない、解ってらっしゃる、副店長嫌いなんだよね?平気で威嚇出来るのみーちゃん位だよ……


「ミゥ」にぃにいじめるのきらいなの


 ほんとよね?ドSの世界は怖いわー!


「何かのテレパス受信……」


 俺のテレパスぶっ壊れろ!



「あのー!副店長!俺達男手って言っても、遊具とかそういった建築の魔法も使えないので無理があると判断しました!」二号


「はい、良く気が付けました、大工さん呼ぶので補助しなさい。」


「「「あい!まむ!あざっす!」」」


 た、試されていた……!


(おっそろしい女……)




「思い付いたよー!いいのがあった!」


 おお?マドロンさんが何か思い付いたらしい、が期待していない。


「何ですか?」


 そっと降ろされる、恥ずかしいの?


「あのねーこういうの、どうですか!」


 紙に書いた物を地面に置く、俺が見るの?えーなになに、形が書いてあるけど、長い棒と短い棒がクロスしてる、ナニコレ……


「壊滅的に絵が下手ですよね、何が何だか分からないんですけど?」


「えっ!ぇー……あっ!待ってて!」


 多分却下されるんだろうけど、面白そうだから見ている、小屋を建てた時に残っていた長い平たい板と短く太い棒を持ってくる、最初からそうすれば良かったんじゃ?絵が下手なら。


「時計見ててね、良いかなって思ったのよ、こう、短い太い棒は真ん中に置いて、この長いのは上に置くの!ね?時計みたいでしょ?」


 だから何って思うんですよね。


「全然時計に見えませんけど?」


「えー!見えるの!ほら斜めから見ると。」


「で、それがどういった遊具になると?」


「……そこまでは考えてなかった!」


 何でだよ!だだの時計に見えるナニカ!?


「分かりました、お仕事に戻って下さい、二度と邪魔しないように。」


「ういっす!すいませんでしたっ!!」


 土下座してからピューンと帰還、結局何がしたかったの?


 はぁーとため息の副店長、分かるよ、駄目な飼い主でさーせん、そんな飼い主のバックアップするのよー!あの形が何になるのかを考える、じーっと見る……ナイカナ?



「あれ、何ですかそれ?シーソーみたいなの」


 ハッ!二号!それだよ!シーソーっ


「何ですか?しーそーとは?」


「えーと、端と端に人が乗ってお互いが上下に動く……みたいな?」


「何が面白いんですか?それは」


「そ、それは……やってみると案外面白い……かもしれないです?」


 くっ苦しい!確かにやってみないとアレはわからない、大人はあんまりやんないし。


「……ならばやってみて下さい。」


「え」


「説明だけでは分かりません、実際にやってみて下さい、どうぞ?」


 た、試されてるっ!言わなきゃ良かったって顔してる!どどどんまい!


「いっ……一号ー!ちょっと来て?」


 巻き添えの一号、ていうかお互いもうそれで呼びあってるんだ?そうか俺がボスだったな。


 遠巻きに見てた一号が嫌そうに近づいてくる、声は聞こえていたはず、後はやるだけだ、だけど、あれ水平にしか動かないよね?


「えーと、俺と一号が両端に座ります……」


 案の定お互いが端に乗って座っても水平……ですよねー!真ん中がちゃうねん!しょうがない……手助けしよう、練習しまくったカマイタチで真ん中の短い太い棒を三角にシュパッと切る!


「うおおっ!!」


 ガッコーン!と一号の板の端が地面に叩きつけられる、やり過ぎた、素直にすまん、衝撃で男の子の大事な部分を打った模様、ほんまスマンカッテー!地面に転がりうずくまる一号の腰をテンテン叩く、すまぬーすまぬー!


「ぐぅーボスぅ酷いです……」


「ほう、成る程、拷問器具ですか?」


「ちっ!違います!これはあのっ極端な例で!本当はもっとゆっくりめで……拷問じゃないです、決してないです!」


 二号が必死、お仕置きで使われる恐怖と戦っている!分かるよー!


「ンミァ?」なにがいたいの?どこなのー?ひーるするの?


 駄目です!これは男の子じゃないと分からない痛みなの!にぃにがしまーす、ヒール!


「あ、有り難うございますボス……」


 すまんて、睨まんといて一号はん……


「ほう、ゆっくり……両端が体重で上下するような遊具?と考えるべきですか?」


「そっ!そうです、さすが副店長!」


 よいしょの二号、巻き返せるか、誤魔化せるかの勝負だよっ!


「何となくは分かりました、大工さんに試しに作って貰いますか、戻っていいですよ。」


「「あいあいさー!!」」


 二号が一号に肩を貸してヨタヨタ去っていく……拷問じゃなくて良かったな。


「お仕置きには使えそうですね……」


 そうですね……

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