第50話 正体がバレた

「ニュース速報、動物も冒険者になれるチャンス!神からの信託があった模様……ナニコレ……」


「神様って馬鹿なんですね、初耳です。」


「やったー!きゅーちゃん!冒険者になれるよー!!」


「うぇい!待ってよ!ミネルバさん!おっかしいでしょ?コレ!」


「何でですか?神様がいいと言っていますからいいんです!」


「いやいや、これこれ、嘘だと思うよ?フェイクニュースだよ!」


「そんな事有りません!ちゃんと先輩が決めた事なんです!嘘じゃないです!」


「……その先輩とやらはどういった方なんですか?独り言でも言ってましたね?」


「何と……えー神様です?」


 ねぇアイツたまには嘘とか建前とか言えないの?手に負えないんですけど?


(前の世界からそうだったんでしょ、あたしに文句言わないで。)



「なるほど、神の名前は?」


「アドリアナ先輩ですー」


「貴方の本当の正体は?」


「堕ちた神ですー」


 …… (……)


「落ちた?なにそれ?興味あるー!面白そうミネルバさん話して!話して!」


「え?有りますか?あのですねわ


(ストップー!!)


「え?」


「ん?」


(あんた馬鹿!?人間に正体知られるなよー!超絶ペナルティーが待ってんぞ!!)


「ええっ!ちょ超絶ペナルティー……なんですか?それ?」


(おまえは!神の謹慎処分!最悪マジ人間落ち!神様剥奪!)


「うげっ!やです!どうしよう!!」



「いや、こっちが聞きたいよ!何があったの!?ペナルティーとか?」


「え?いえ、言えないですぅ……」


「……情緒不安過ぎない?大丈夫?」


「ミネルバさんの名前に(爆)がついてるのと関係が有りそうですね?」


「ぶっ!な、なにそれ……」


「爆笑の爆ってきゅーちゃんが言ってましたね、勲章らしいです!」


 止まらない止められない……


(最悪だ……あの副店長なんか探ってる!)


 そら探るだろこれだけ馬鹿なら。


(だよねー)


「ふふ、成る程爆笑ですか、とてもお似合いですよ?」


「ありがとう御座いますっ!」


「違うよ!?誉めてないよっ今の!!」


「店長より馬鹿は初めて拝見しました、お見事ですよ?」


「うおい!ハッキリ言わないでー!」


「そうなんですー!きゅーちゃんには何時もポンコツ馬鹿って言われてます、もう慣れましたけど!」


「本当だとしたらそれも酷いけど!言いそう!あの子!」


 んだとこらー!ポンコツ馬鹿二号にしてやろうかっ!


「きゅーちゃんが店長にポンコツ馬鹿二号にしてやるって、昇格ですね!」


「どういう事ー!?」



 やめろー!まんま喋るな!剥奪だって言ってるよ!?何で止まらないの!!



「ハッ!!今のは嘘です!!」


「……何となく分かりました、貴方の事。」


「え?ナニナニ!?」


「店長は仕事してください?大幅に減給しますけど?」


「き、聞きたい!でも減給パナイ!店長行きますー!」


 おう……ついに


(やっちまった……)




「貴方には特別な力があるんでしょうね?恐らく隠蔽でしょうか、ステータスに爆笑なんて普通は付きませんもの、私は声が聞こえるという可能性を信じました。」


「え?な、なんの事ですか?ね?」


 いまさら誤魔化すの?馬鹿なの?


「しかし……そうですね、知られてはいけない事、なんでしょう?」


「……えーはぃー。」


「私は上の方々と繋がりがあります、国の事でまずい事でも起きてしまうのは本意ではありません、ですから内緒にします。」


「ほっ!本当ですか!!」


「ただし、他の方には貴方は妄想癖がある、と言う設定にしますので、そのままで宜しいです、逆に取り繕うとボロが出そうなので。」


 副店長が味方になったどー!!


(はふんー……人間一人が知っても多分大丈夫だと思うよ、マジ冷や汗もん!)


「?何時も通りでいいんですか?」


「そうですよ、独り言を喋るおかしな人という事ですね。」


「う、おかしい人……」


 馬鹿が、いいんだよ!それで!お前は立派にオカシイ!胸を張れ!


(そうだよ!ミネルバ!あんたはちゃんとオカシイ!安心しろ!)


「泣きたい気分です……」


「常に罵倒でもされてますか?仕方ないでしょう?馬鹿なんですから。」


「ハイ」


「それで、動物も冒険者に、と言うのはソレ関係なんでしょうね?ワンコさん魔法使えますものね?」


「あうーはぃー」


「ふぅ……成る程、それで何を希望しているんですか?」


「えと、冒険者です。」


「貴方が冒険者になった意味はなんですか?同行をする人間が欲しかったと?」


「なっなんでわかるんですか!」


「馬鹿じゃないからですかね。」


「そ、そうですよねー?副店長は天才だと思います!」


 持ち上げても通用しねーぞ……


「そんな事はいいんですよ、何故、それなら動物も冒険者になんて馬鹿な案が出たんですか?ここの神は馬鹿なんですか?」


(うぐー!)


「えと、きゅーちゃん達を連れ出すのにどうしたらいいか、と思ってですね……」


「それでコレですか?正気の沙汰ではありませんね、ワンコさんの事だけでしょう?世界規模の話ではないんですよね。」


「はいーすいません……いい案が思い浮かばなくて、つい。」


「つい?つい?でコレですか?」


(やめろー!心に刺さって痛いわ!)


「あのですね!先輩はみーちゃんが大好きなんです!なので、えと、そういう事です。」


「いえ、意味が解りません。」


「せっ先輩っー!」


(神なんてそんなもんって言っとけ!悪かったな!そんな案しか思い付かなくて!!)


「……神なんてそんなもん、です。」


「そうですね、貴方がソウなら、その可能性は有りますね。」


(ぐぎぎ!こいつムカつく!)


「こいつムカつくと言ってますー」


 ……なんでそこ言っちゃうの?


「え!駄目でした?」


「存分にムカついて結構ですよ?関係ありせんもの私は。」


(そーですねー!!)


「……っ……」


 狼狽えてるー!お前ら喧嘩すんなよ!ポンコツには対応出来ないだろ!!


(はぁはぁーふぅふぅー落ち着けあたし!)


「け、喧嘩は良くないです……」


「私、喧嘩してる覚えありませんが?」


 やっやめてーー!!


(ちょ、ちょっと遠く行くわ……こいつの話聞きたくない!)


 そうしてー!ポンコツがエンストしちゃうから!!


「えんすと?ってなんですか?」


「さぁ?それより、冒険者になってどうしたいんですか?ここを辞めるんですか?歓迎しますけど?」


「えっ!辞めません!お願いしますー!きゅーちゃんが、ここを離れたくないから連れ出す相談をしてたんです!」


「あら?ワンコさんここに居たいの?」


「はい、飼い犬生活がしたいんです!働きたくないんですきゅーちゃんは!」


 言うなよ!恥ずかしいだろっ!


「ひゃーごめんなさい!!」


「そうですか、まぁ犬ですからね、そんな考えしても別におかしくは有りませんけど。」


「で、ですよね!」


「しかし、そうですね、ワンコさんの目的が少し解りませんね、働きたくないのに冒険者になりたいんですか?」


「いえ、何かダンジョンに興味があるみたいで、冒険者なら行けると思って。」


「興味だけで世界のルールを変えたんですか、神にとってワンコさんは大事な位置に居るんですね?」


「えー、みーちゃんの為かなーと。」


「つまり、猫さんも特別な存在だと、とすると、ヒヨコさんもそうなんですね?」


「ど、どうでしょう?私はきゅーちゃん推しなんですよ!先輩はみーちゃん推しなんです!ぴーちゃんはここで拾った子なんでまだ推しが居ないんですけど、副店長どうですか?」


 アホな質問すんなよ!


「居ないならそうしておきます、それで、コレからは冒険者になってダンジョンに行くと言う訳でよろしいのですね?」


「そんな感じですー連れ出してもいいですか?ダンジョンに。」


「ルールまで変えたのに駄目とは言えないんですが?」


「あ、はい」


「はぁーそうですか、何だか複雑ですね、問題があれば必ず私に相談を、他の方は駄目ですよ、事情をしりませんから。」


「あい、まむー!」


「……はい、ではワンコさん達を連れてギルドへ登録してきて下さい。寄り道してはいけません、無駄な買い物も許しません。」


「ひゃいー!」


 ふぉー!やった!何とかなったー!って本当に登録できるのかね?


「行ってみましょう!!」


「どうぞ。」


 ……これ以上刺激しない方がいい、みーちゃん、ぴーちゃん!ギルドへいくよ!


「ンミー」だんしょんーたんしよー


「ピィピ」ねぇね、まちがってるの


 ほら、早くしないと副店長がおこだよ!


「ンミッ!?」「ピ?!」


 ダッシュで扉にお座り!リードおねー


「あ、はいーリード……リード」


「犬に使われるとは無様……」ボソ


 言い返せないわー……




 と、言うわけでギルドへやって参りました、前回で覚えてるのか、ポンコツが入ると皆が目を反らしている……


「……あ、依頼ですか?大丈夫ですか?」


 心配されてるぅ!


「違います、登録に来ました!」


「……あの、もうしてますよ?覚えてます?本当に大丈夫なんですか!」


「?はい、大丈夫です、登録はきゅーちゃん達です!」


「誰ですか!?」


「え?きゅーちゃん達です」


 いや、俺達を見せろよ、架空の人物だと思われてるぞ。


「ああ!そうでした、この子達ですー」


 ポンコツが下を向いたので、カウンターから乗り出して俺達を見る受付のおねいさん。


「……え?本気ですか?私疲れてる?」


「お疲れ様ですー登録お願いします!」


 ナンデヤネンー


「確かに動物もと言われましたけど本当に来るとは予想外すぎる……まさか虐待?」


 無理もねーぜ、俺達以外が登録するとは思えんわーもっと考えれば良かった……


「逆に?何ですか?逆さまにするといいんですか?たい?たい……体操させる?」


「ち、違います!止めて!天然だコレ!」


 そうなんです。


「あの、何もしないであげてくださいね!?登録はしますから!」


「え?逆に体操は?やらないんですか?」


 どういうやり方?逆に教えろ!


「やらないし意味が分からないので、本当に何もしないでお待ち下さい!ちょ、ねぇあんた監視してて!」


「は、はぃ。」


 やらせないけどね?お座りして待ちますよ、後ろがザワザワしている、ポンコツが連れてるせいか俺達まで変な動物に見られてる!


「ピィー」どうぶつがとうろくするだけで、へんなのおにぃ


 ……だよねーへへっ


「ミー」だんしょーたんしよー


「お、お待たせしました、えーと水晶に触れて欲しいんですが……」


 おい、ポンコツ馬鹿、俺達持ち上げろ。


「あ、はいーあっ!ステータス!」


 もう隠蔽してるわ


「ならいいですよね!用意がいいですね!きゅーちゃん!」


 馬鹿と同じにするなよ?


「はいぃ!」


「ちょ本当に大丈夫かしら……」


 完全に独り言だな。


 カウンターに乗っかり水晶に手を置く、ポワッー……感動!


「あら賢い……」


 はい、みーぴーもするのよ?


「ミー」ぽんぽんー


「ピ」あしがとどかない、おにぃ


 せやな、咥えて水晶に乗っける


「かっ!賢い!飼い主以上!」


「そうなんです!賢いんです!」


「さ、左様で……」



「登録は完了しましたが、わんちゃんだけではないんですね。」


「はい、三匹兄妹なんですー」


「え……あーそうなんですかー……」


 もういいわ、はよカードくれ。


「はい、カードください!」


「あっはい、どうぞ、無くさないでくださいね?再発行はお金が掛かりますので。」


「そうなんですか?働いてるので!」


「……ちなみにどこで働いて?」


「マドロンさんの御店ですー」


「……あっああ!兄妹ってそういう事ですか、たまに解放時間行くんですよ、ヨーンが好きなのでそればかりで、噂は聞いてました、賢い兄妹が居ると、成る程……賢い。」


「ですですー今度はきゅーちゃん達にも会いに来て下さいー」


「そうですね、分かりました、確認もしたいですし、そうします。」


「確認?」


「あ、えーとどれぐらい賢いのかな、と。」


「凄くです!」


「あ、はい……」


 おいー!はよ帰ろう!副店長が怒るぞ!


「ひゃー!怒られたくないです!帰ります!ではー!」


「お、お気をつけてー。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る