第42話 魅了と副店長と

 ぴーちゃんが無事ヒヨコのままの決心をしてくれてホッとした、マジ無理なもんは無理。


 そんなぴーちゃんは最近割り算を勉強中、正直ヒヨコが計算できたから何だって話だが何時か役に立つと信じてるぜ!特に神様がポンコツ馬鹿だと苦労するしな。


(うー難しいですぅ!こんなの覚えても役に立ちません!)


 思春期の高校生みたいな事言うなよ、馬鹿な数値にしてからに、説得力の欠片もない。


(もういいじゃないですかー!終わった話ですよ!勉強はしなくてもいいでしょ?)


 お前……ずっと神様するんだろ、次に能力やる奴にも同じ事すんの?


(しません、先輩に数値はコレって!決まり作ったんです!)


 本当にマニュアル通りにしか動けないんだな、哀れみさえ感じるぜ……


(ぷんっ!いいんですー!それで!)


「ピィピ」だめなかみさまのみほん


(ぴーちゃん!!そんな事覚えないで!)


「ピ?ピー」おぼえたんじゃないの、かんじたの、ばかにはなりたくないの


(……ふふっ天才と比べないで……)


 泣くなよ、ヒヨコに勝てないからって。



「きゅーちゃん!大変!」


 ん?マドロンさんの大変はそうでもないからな、何だよメルー二号?


「何か貶められてる気がする、って!大変なのよー!勇者がご来店するんだって!」


 へー?誰が来るんだろう、あの厄介な魔法持ちだったら全力!


「何で攻撃姿勢?やめてね?」


 チッこいつ事の重大さ分かってねーな?


 俺はポンコツ馬鹿に聞いたんだぜ、ヨーンを誘拐しようとしたのが勇者の指示だってな、この店には内緒にしてるが、外交問題をややこしくしない為なんだろう、少年王はちっと懐柔されてねーか?魅了なんてもん使わなくても人は操れるんだぜ?


(人間は人間を操れる!勉強になります!)


 いや数学の勉強しろ。


(やっふー!やったぜー全部読み終わった!完璧よ!もう読みたくない……)


 騒がしい、ポンコツがまた二人になった。


(何だろう、反論する気になれない…)


(先輩!ポンコツに慣れたら駄目です!)


 ポンコツがポンコツに説教とな?お笑いコンビでも組むの?宇宙初?


(いや、ミネルバだったら他が良いな)


(えーっ!他のポンコツ探すんですか!)


(それもいいかもね、ふふ……)


 壊れてやがる……


(きゅーちゃん!神様を操るなんて!冒涜です!冒涜ー!反対!)


 冒涜とは何か調べてから言えや?俺は貶めてはいない、ポンコツにしてるだけだ!


(それが冒涜ーっ)


 うっせーな!棒が欲しいなら取ってこいやっ!足元の棒切れを投げる!


「ミッ!?ミー」とってくるのー!


 違うのよー!みーちゃんカムバック!



「……ワンコさん」


 ビクーンッ背後に副店長が居たし!


「今日勇者が来るそうです、聞きましたか?聞きましたよね。」


 質問なのに決定してる。


「魅了持ちの勇者が来た場合、店長をどうにでもしていいので何かあったら止めて下さい、死ななければいいですから。」


 お、おう……コクコク。


「私は誘拐事件の犯人を知っていますが王が公表してないので黙っています、が、勇者がお金を持っていてあのスキルなら何かしらやりかねません。」


 流石ですね、切れ者ですわ!


「……その様子、驚いてませんね?何か知っているのかしら?」


 げーっ!止めて!尋問は!フルフル。


「……まぁいいでしょう、店長はお願いします、私は他の店員を守るので。」


 マドロンさんも助けてやれよ…


「飼い主の責任はペットに、逆もまた然り」


 うそーん……


「では、そろそろ夜です開放時間に来るでしょう、頼みますね。」


 あい、まむぅー……


 あ、そうだもしアイツが来たらみーちゃんを狙うはず、みーちゃんー!


「ンミー!」ぼうとったのー!


 あ、偉いねー?凄いね?疲れてない?今日の開放時間おねむにしない?


「ミ?ミィーミ!」みぃ?へいきなの、げんきなの!


 ……あ、そう?でもあの、今日はちょっとみーちゃんに休んで貰いたいなーってにぃに思ってるんだよ?たまには休もう?


「ンミ!ミ?」へいきなの!なんでなの?


 えーと……どうしよう超やる気やんけ!猫はもっと寝ないとだめなの!大きくなれないよ?


「ミッ!」みぃもうおとななのっ!


 嫌よ!みーちゃん!そんなに急いで大人にならないでー!


「ピッピー」ねぇね、ぴぃねぐあい、わるいの、いっしょにねて?そばにいて?


 天才がおるやんけ!!


「ミッ!?ミー!」いもうとがびょうきなの!にぃにみぃいっしょするの!


 そうだね!お願いしようかな!!


 ぴーちゃんがそっと寄ってきてコレで良いの?と聞いてくる、ほんまの天才やんけ!


(て、天才!というか気遣い?)


 ポンコツがナマ言うなよ!天才だよ!


(はあ……結果は良しですしね。)


 おっしゃ!何時でもこいやー!ボッコボコにしてやんよっ!



 


 そして夜の開放時間、みーぴー姉妹は小屋の中へ、強固な結界を張っておく。


 寒くてすまんが、今日は外でお触りだ、みーちゃんの危機、おめーら勇者に気抜くな!


((いえっさー!!))


「開放時間ですーあっ!勇者様いらっしゃいませ!どうぞ!どうぞ!」


 お店がザワザワしている、マドロンめっ!なーにが様だ!ザマァでいいんだよ!


「こんばんわ、いやごめんね、可愛い子又見たくなってね?」


 やっぱり来たか、魅了持ちのアイツだけだ、自分の疑いも気にしねーとは大したもんだな、おん?


「あ、あれ?小屋は?開かない……きゅー


「店長、今日は申し訳ありませんが外での開放になりますご容赦下さい、勇者さん?」


「別に構わないよ、君は?」


「当店の副店長をさせて頂いてます。」


「へぇ、名前は?」


「ご容赦下さいませ。」


「…そっかー振られちゃったな、はは。」


「ちょ!あの失礼しました!お名前は


「店長?勇者さんのお相手をどうぞ?」


「あっはい!ご、ご案内しますぅ!!」


「上下関係違くない?」


「へへっ、あ、どっどうぞ!どうぞ!」


 もしかして、名前を聞かないと発動しないのかもしれない、かなり警戒している。


 中庭に入った二人が俺の所へ来る、そう来たか、いいよ?相手してやるよ。


「あ、この子がきゅーちゃんと言って、変わった賢い犬なんですよー!天才!」


「ああ、パレードで見たね、ポメだよね?違うのかな?」


「ぽめ?とは?何ですか?」


「あれ知らない?ポメラニアンっていう種族なんだよ、僕の記憶が確かなら、ね?」


 じっと勇者を見るが返事はしない、お前に媚びなんぞ売らねーよ?


「あ、あれ?何時もは頷いたりするんですよ?本当に賢くてっ!凄いですよね?人間の言葉も理解して」


 ほお、マドロンやってくれたな、鑑定すると案の定魅了に掛かっている、俺の事何でも話しそうだ。


 今此処で魔法を使ってリカバリーする訳にもいかない、思ったより早く仕掛けて来たな。


「へえ!それは凄いね!天才ってやっぱり居るんだね?他には何が出来るのかな?」


「えーとけっ


 させん!治ったばかりの膝小僧に思いっきり犬パンチ!


「ふげっー!あうっ!痛いっ痛いつ!!」


「……随分と力のある犬だね。不思議だね?異世界にポメラニアンなんて?」


 転がるマドロンさんを見ないで俺を見つめる、俺に魅了かけるか?できないだろ?


「きゅーちゃんだったよね、猫ちゃん何処かな?あの時の見てね可愛くて貰い受けられないかなって相談しに来たんだけど……店長があれだと無理かな?」


 そうだな、帰れば?睨み付ける、お前の魅了には掛からないんだよ、覚えとけ?


「……へぇ、勇者の能力が効かない犬、ね?君はなんだろうね?」


 犬だよ、尻尾振ってやろうか?おん?


「挑発されてる気がするなー気が付いてるんだね、猫は隠したんだ?やるね?」


 マドロンみたいに馬鹿じゃないんでね?次はどうするんた?


「ふぅー想像以上に賢い、そして魔法に掛からない、やっかいだな。」


 フンッと鼻で笑う、お前の悪行は知ってるんだぜ?みーちゃんを狙った事は万死に値する、どうしてくれようか?


(みーちゃん……みーちゃん!あたしだって!許せないの!でも手出せないの!何とかして!犬なら出来るっ!!)


(待ってください、今探します!えーと……いいやもう魔法使っていいんじゃ?)


 そうなんだけどね、こいつ言い触らしそうなんだよな、条約なんてちゃちゃなもん平気で破る事も出来るだろう、勇者だからな。


((うーーん))


「猫ちゃんは小屋かな?店長さん?」


「ぐぅー!あぃそうですぅー!」


 勇者が小屋に行くが結界が張ってある、そこは安心だが、誰が結界がをしたか考えるだろう、マドロンは魅了中だからすぐに俺だと言うだろう、使えない飼い主だぜ。


「ん?あれ開かないね、これ……結界だね、誰がしてるのかな?店長さん」


「はぁはぁそっそれはき


 だーってろ!追撃皿壊してやんよ!!


「んぎぃー!うおーっ!割れた割れた!」


「賑やかだなーそんなに言って欲しくないんだ?もうさ分かってるよ?君なんだろう?」


 首コテっで知りません?


「んー可愛いね、何で隠したがるのかな?」





「貴方が勘違いしているからでは?」


 ふ、副店長!他は安全なのか?


「やぁ副店長さん、どういう意味かな?」


「そのままですよ?実は私鑑定出来るんですよね、当然害のありそうなお客様は失礼ながら鑑定していますの。」


「つまり僕の魔法は理解しているんだ?」


「ええ、店長に魅了を掛けているのも……貴方が色々裏でした事も、ふふ。」


「んー参ったね、でも裏って何かな?身に覚えがないんだけどなぁ。」


「ええ、ええ、そうですね、裏は裏ですから内緒ですものね?いいのですよ?別に。」


「うはっ怖いな!君でも予想で決めつけるのはよくないよ?」


「あらあら予想かしら、そうかもしれませんね?所で、何故そこまで猫ちゃんを狙うのかしら?是非お聞かせ下さい。」


「狙うって!そんな物騒な事しないよ?ただ欲しいなって思ってるだけだよ?」


 ……何も出来んわ、怖くて入れない。


(ま、任せましょう!)


(今ここで盛大にやっちまったら不能にしてやれるのになー!)


「貴方が勇者という地位に居ようが、猫ちゃんは駄目なんですの、ワンコさんと兄妹なんですよ、引き離すのは可哀想でしょ?」


「種族が違うのに兄妹?可笑しいね?」


「あら、見解が狭いのですね?若いからしょうがないのかしら?そんな事人間でもありますわ、もっと知恵を着けたらどうかしら、今の貴方とても滑稽だわ。」


「……何も名前聞かなければ出来ない訳じゃないんだよね、そう匂わせたけど。」


「では、どうそ?貴方の唯一特に必要のない無駄な魔法を掛けてみて下さい。」


 すんごい挑発してるよ、掛かるでしょ?


「自国にはここまで侮辱された事なかったよ、皆勇者ってだけでちやほやするからね、此処でもそうだったけど、君は違うのかな?」


「あらまあ、お気付きじゃないのね?この国は勇者は毛嫌いされて居ますの、黄色い声援は所詮貴殿方の顔、だけですね?」


「ははっ、そうだったんだ?流石に気が付かなかったよ、じゃあ、そうだね君にも黄色い声援を送って貰おうかな?」


 ええっ!ピンチ!副店長が!?コワッ


(そっち!?)


 魅了を掛けるのに余り気づかれたくないのだろう、伏し目がちになり、魔法の光をさりげなく隠す、光るのは目だ、確かにあれなら気がつきにくいだろう。


「…どうかな、副店長さん?お名前は?」


「…………」む、無言!


「抵抗してるのかな、手強いね勇者の力なのに……ねえ?お名前教えて?」


「ええ、そうですね。」


 やはり効いてしまった……


「店長はご存知マドロンという名前です他の名前は……教えたくないんですよね、何故でしょう?分かりません?」


「……かなり芯が強いんだね、脱帽したよ……そういう人間も居るんだって勉強になったよ、有り難う、今日は帰ろうかな?」


「左様で、またのご来店を。」


「……はぁー凄いな……」


 若干肩を落として帰る勇者、ふ、副店長には魅了が掛かって居るのは鑑定で分かったが抵抗出来るんですね……。


「ワンコさん」


 はっ!はいぃ!!


「私は何処かおかしいですね、考えがあやふやなんです、何かあるなら解いてくれます?」


 あい!まむぅ!キュア!!


「……ああ、魅了とはあんな感じなんですね、抵抗しようと思えば案外出来ますね。」


 あんた位じゃないの……

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