第30話 ヘールストレーム

 そして勇者は居なくなった。


(誰のせいー!?)


 俺は何もしてないじゃないですかーやだー?人の、犬のせいにするとか、マジ正気?


(結果を見ればあんたのせいでしょ!都合が悪いと犬ぶってんじゃねぇ!)


 いやいや、犬 だ か ら ?


(あふぅんー……)


(先輩、きゅーちゃんと戦おうなんて止めて下さい!ポンコツになるんですから!)


(ポンコツに慰められてもぉ!)


(酷いー先輩!)




 何か神どもがギャーギャー五月蝿いね?おーよしよしー起きちゃったね?抱っこしたろ。

 うみぅと起こされて機嫌の悪いみーぴーコンビを抱っこして、ペロペロしてリラックスー。しようとしたら、マドロンさんが静かに近づいて来たよ、何だよ!


「ちょ怒らないで……ほら、犬の件が終わってないから、きゅーちゃんが嫌なら止めるけどどうする?って……」ひそひそ


 あ、そうだった、怒りに任せて忘れてた。


「ど、どうする?止める?」フリフリ


「いいの?本当に?怒らない?」コクコク


「じゃ、じゃあ明日ブリーダーさんに連絡しておくね、ごめんねーお休み」ナデナデ


 ふぅ、全く変態勇者のせいで散々だぜ、うみぅーぴーうみゅーぴ、抱っこした前足の中で寝言を言いながら眠る姉妹を見てほっこり。



 翌日マドロンさんと店員さんでブリーダー店に再び、てかマドロンさんの膝は治ったのか?驚異的な早さだ、訓練に使えるか?


「あのー、膝見るの止めて?まだ痛いんだからね?何か企まないでね?」


 チッ、勘が良くなってやがる。


「舌打ちしたよね?聞いたよね?」


「店長ー気のせいです、早くいきましょ」


「うえー何でよー……」


 め、メルーさんに益々近づいてやがる。



「あらあら、この前はどうしちゃったの?きゅーちゃん、怒ってたでしょ?」


 おばさんが抱っこしてナデナデ、すんませんー許して?必殺技上目遣いビーム。


「あら?まあ可愛い!本当に欲しいわ、マドロンさん?交換しない?」


「え……あざとい……いや、駄目です!」


「イヤイヤになったら何時でも来なさいねー?みーぴーちゃんもね?」


「ンミィー」はーい「ピッピッ」わかった


「ちょ返事すんなし!ウチの子!」


 ほほほーと笑いながらお店の中へ。


 以前来たときは六匹だったが小さいのが二匹増えていた、お?小さい時はそこまで厳つい顔してないな?


「あれ?おチビ増えたんですか?」


「そうなのよー、丁度雌の子が産んでね?可愛いでしょう?」


「はい、幼いヘールストレームって初めて見ましたけど小さい時は可愛いですねー?」


「店長……失礼だし。」


「ほほほ、いいのよ、良く言われるの、むしろ何故大きくなると厳つい顔になるか不思議でね?日々観察してみたりするの、でも気が付くとあっと言う間!あの顔になってるの!」


 生命の神秘なりぃー!


 みーちゃんとぴーちゃんが小さいのに近づいていく、俺は様子見、どうやら以前俺が急に怒り爆発したのを怖がっている、やべぇ。


「店長、大人の方きゅーちゃんを怖がってません?あれ無理なんじゃ?」


「は、は、はぁーどうしよ……」


 マドロンさんの足の間に隠れてみる、俺は居ないよー!


「いや、無理がある。」っすね!


 小さいのが二匹みーぴーコンビと遊んでいる、おおー、中々ほっこりではないか!まぁどっちも小さすぎて力負けしている、様に見せかけている。訓練してるからね、勝っちゃうのもどうかって、様子見してるぽい。


 ウチの子賢いなりー!!!


((…………生まれたてと百歳の差。))


 神様攻撃できる攻撃魔法ちょうだい?


(やるとおもうてか!)


(あるんですか?どんな?)

 

(お前には教えん!ポンコツ!)


(先輩が酷いー!ポンコツってきゅーちゃ




 うるせーな?余所でやりなさい。


 大人のヘールストレームが俺にビビってしまったので、マドロンさん達は子犬でもいいのでは?と話始めた、俺は何でもいいっすよ?将来あの厳つい顔になるなら俺の驚異にはならないので、賛成ー!


 みーぴーコンビも遊んで仲良くなっていたので相性が悪い事はないだろう、とマドロンさんが子犬を貰うかどうかを決める。


「どうしようか?二匹兄弟みたいだけど両方貰う?」


「そうですねー、経営に困ってる訳でもないですし、副店長も複数匹でもいいと言われてるので、そうしましょうか?」


「え、私、聞いてない……いいって言ってたの?」


「……はい。」


「ちょ何、その為!」


「何でもないですよ?」


 マドロンさんより副店長のが発言権があるようだ、情けない……。


 結局マドロンさんは子犬を二匹貰う事にした、顔は複雑そうだが。


「まあまあ、良かったわね、離れないで。信用もあるお店のだもの、これ以上ない良い場所よ?仲良くしなさいね?」


 おばさんは少し寂しそうに話しかける、折角産まれた可愛い子犬を渡すのだ、もう少し親元でも良かった気もするが、貰うのならば早い方が良いらしい、早く環境に馴染む様に。


「大事に育てますので、開放時間にでも遊びに来てください、有り難うございます!」


 あざーす、と俺達三匹もお辞儀する。ヒヨコ的には中々無理な体制だが頑張った!偉いねー?尻尾でサワサワ撫でる。


「ピッピッー」きもちいいー


 みーちゃんが嫉妬の尻尾掴み!だが掴ません!今の尻尾はぴーちゃんのなのだ!


「あらあらー仲がいいわ、種族が違ってもこんなに仲がいいなら安心ね?ふふふ。」


「はは、そうなんですー、任せて下さい。」


 マドロンさんと店員さんに抱っこされた子犬二匹はどこか悟ったようにおばさんを見ながら遠ざかる、何か気まずい……。


「きゅーちゃんが気にする事ないんだからね?こういうのは見慣れちゃったせいか、その分大事にしないとって思うよ。」


 マドロンさんのくせに生意気だった。

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