第16話 買い出しの教訓

「おっお犬様ーっ!!」


 んだ?うっせーな?昼寝中だぞ?


「あの、ちょっと、お庭は夜の解放なんで!困りますお客様!」


「おっ俺の事覚えてないンすか!勇者ですって!店長さん、あ今日もお綺麗で!」


「はぁ、ありがとう御座います……」


 ブサに言い寄られて可哀想だ、助けてやろう、ドアをカリカリして開けてー?


「え?いいの?……今回だけですからね?次はちゃんと解放時間でお願いします。」


 店長のマドロンさん超嫌な顔してるけど、ブサは空気が、読めない、店長にも会いに来ますよー、とか言ってる。ドン引きやめたれ。


 開いた扉からブサが入ってくる、ヨーンはサササっと逃げていく、誰にも人気ないとか勇者として終わってるよね。


「お犬様ー、何とか何とか神様説得してください!お願いします!俺使えない勇者になったんですよ……いろんな意味で!」 


 はい、自業自得ー。


「せめて不能だけはっ!呪い解いてください!俺自力でハーレム頑張るんで!」


 迷惑で泣く女が出るから解除しない。


「泣かせないっすよー俺紳士だから!」


 紳士が店長に嫌がらせすんじゃねーよ?強制排除しますよ?


「嫌がらせ?してませんよ?やだなー」


 無自覚が一番タチ悪いわ!


「お犬様には分からんでしょう?人間の男女の駆け引き!あれは嫌よ嫌よも好きのうちってやつなんです、マジで!」


 いや、マジで嫌がられてるから?あんまりシツコイと神様に去勢頼みますよ?


「うげっそ、それだけは……」


 何と言われようがお前の能力はそのままだ諦めろ、それ以上文句あるなら透過も不能にするけど?いいんですか?


「救いがないっ!今度呼ばれる可愛い勇者にいいカッコしたいんす!俺すげーって!」


 言っておくが召喚はランダムだ、可愛い女の子が来るとは限らない。


「夢がないしっ絶対一人は来る!テンプレっすよ!絶対なんですだからー」


 ……そうだな、もし可愛い女の子が召喚されたら考えてもいいぞ?


「ま、マジで?言質取ったっすよ!?」


 おう、男に二言はない!


 ヒャッホーと叫びながらでていった、五月蝿いヤツ……マドロンさんが嫌悪感丸出しなのに又来ますね!とか言ってるし。


(きゅーちゃん、そんな約束していいんですかー?)


 ハッ馬鹿め!考えてもいいと言っただけよ、絶対なんて言ってないだろ?


(うお、鬼畜……)


 策士と言え、ポンコツ!お前だってあいつの能力は今のままがベストだと思うだろ!


(あっそうですね、ならいいのかな?)


 次の召喚があったら、どんなのが召喚してきたか報告しろよ?何だったらマジで去勢も考えないといけないからな?


(ふぁいー……)


「ミィーミィミ」あいつきらいなのーなんだかからだがうけつけないのー


 おお、そうか!それはな、本能的が拒否してるんだ、生理的嫌悪と言うんだよ?


「ミッミッ!」にぃにものしり!


 ふはは、みーちゃんはアイツには近づいちゃ駄目だよ?汚くなっちゃうからね?


「ンミゥ」きたないのはやーわかったの


 よしよし、家の妹は賢いのぅ。


「皆ー集まってーブラッシングするよ?」


 隠れていたヨーンがコロコロ駆けてくる、今日は店長のマドロンさんも参加するようだ、どうしたし?


「あーマジキモい……又来るとか憂鬱すぎー……きゅーちゃん癒してぇー!」


 しゃーねーな、アイツならしょうがない、スリスリモフモフしてやんよ!


「うははっ流石!読んでくれるぅ!天才!」


 わしゃしゃーあふんーもっと上ー!


「店長、自称勇者に気に入られちゃいましたねー?お疲れ様です!」


「そんな事言うとー!担当にしちゃうよ?」


「ははっ嘘嘘です!ほんと……止めてください、今度ケーキお持ちしますぅ!」


「うむ、宜しい!」


 自称になってた、マジでも同じ反応だろ。



「きゅーちゃん、みーちゃん?今日は君たちを買い出しに連れて行きますー!」


 おおっ!買い出しだ!何か買ってくれるかな?みーちゃん楽しみだね!


「ンミー!」おいしいのほしいのー!


「はいはい、一応リード付けるけど……みーちゃんサイズないんだよなーどうしよう?」


 心配ないさ、みーちゃんにぃにの背中に乗りなさいー、離しちゃ駄目だよ?


「ンミーゥ」はなれないのぅ


 俺が伏せるとそそくさとみーちゃんが背中にドッキングぅ!さっと立って、リードは?


「ふはっ、そうかそれでいいか、よしよし」


 俺にリードを付けてお店を出るとマドロンさんはゆっくり歩く、すんません、短足で。


 朝方の露天は買い出しの人達で賑わっている、そんな中、チマチマトテトテ歩く俺達に気が付く露天の人達、買い出しの筈なんだけどお土産貰ってウハウハ、この街に来てから大分色々貰ってるから空間庫の中には一年放浪しても大丈夫な位の食料が入っている。中は時間が止まっているから、ここだけは立派なチートだよねー。


「うわーやっぱり君たちの人気凄いわ、ヨーンと来る時と全然違う、貰いすぎちゃったー」


 俺達の空間庫は無限に入る、最初は入るか不安な様子だったけど遠慮なく入れてるので凄いーと誉めてくれる!尻尾も振りますわそら。

飼い主って決まると何かもうすっかり犬よ、忠誠心的な欲求がパネェ、たまに本能に逆らってみるんだけど、尻尾は正直でいけねぇ。


 それに俺に育てられたからか、みーちゃんの嬉しい表現も俺と同じだったりする、小さな尻尾が一生懸命ピルピルるすのはほっこり。


 そんな二匹が見たいのか、欲しいなって目で露天を見てるとくれるんだ!ふふふっ


「あー何か駄目だー感覚オカシクなる!買いすぎちゃうからココまで!」


 えー?まぁいいっすよ、十分貰いました。


 お店に帰って、買ったものを出していると、店員さんが店長のマドロンさんを少し非難した目で見ている……制限があったようだ。


「店長、コレ要ります?」


「えっーとまぁほらイザッて時とか?」


「何で猫用の餌買うんですか?みーちゃんミルクなんですけど!」


「いやほら、何時でも大人になってもいい準備ー的な……」


「「はぁー次の買い出し分マイナスで」」


「ハッ……はいーすいませんー!」


 頼りない……ちなみにあれは全部買ったわけでもない、くれた物の方が多いんだけど、貰いすぎてパニックになってたから覚えてないんだな……ならば、そうトテトテ……


 文句を言っている店員さんにリードを咥えて次は一緒に行こうぜ?と、足ポンポン、俺のポンポンはお願いと認識されている。


「え?……次は一緒にでお願いな感じ?」


 コクコク、そうです、味わいましょう。


 マドロンさんが俺の意図に気がついた、出来る女よ、自分が買った品と店員さんを見て、少し考えて頷く。


「そうだね!きゅーちゃんが一緒に買い出ししたいなら行ってあげて?」


「え?いいんですか?店長の仕事でしょ?」


「いーの!いーの!体験も必要!ほら私が寝込んだ時、君たちワタワタしてたから!」


「「あっ……」」


「うん、臨時も必要だよね?きゅーちゃん」


「きゃんー!」せやで、一人に任せると後々困るんだぜ?


「わ、分かりました、じゃあ明日は私行ってみます!」


 翌日の買い物はマドロンさんと同じ事して何も言えない店員さんと、それを生温い目で見つめるマドロンさんであった。


 もう一人の店員さんには苦笑いでお誘いを断られた……

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