第6話 放課後(影野 紫音)

 今朝、アイツが一緒に登校しようといってきた。水瀬みずせというやつも一緒だった。相変わらず、元気というかなんというか、テンション高いんだよな。まあ、いい。

 一緒に登校して終わりだと思ってたのだが、今度はまた一緒に昼飯を食べようと言ってきた。仕方なく食べた。俺は弁当を持ってきていたため、買う必要がなかった。それなのに、アイツときたら……。

 また昼飯を寄越してきた。そんなに食べれるわけがない。そう言っても、アイツは聞き耳を持たなかった。一体、なんなんだ。今まで話してなかっただろ。なのに、しつこく付きまとって話しかけてくる。一人の時間のほうが気楽だったのにな。

 そんな事を考えたって仕方ない。今日はなにを言ったって無駄だろう。諦めよう。

 その直後、放課後を知らせる鐘が鳴った。俺が考え事をしていると、いつの間にかホームルームから放課後になっていた。やっと学校が終わり、解放されると思ったのだが、まだ終わっていなかった。

 今日はまだ終わってない。


 昼休みに『影野かげの、部活はやってないんだっけ? 一緒に帰ろうぜ』と言われた。さすがに断ろうとしたが、隙を与えてはくれなかった。なんつーか……


「影野!」

 突然、俺を呼ぶ声が聞こえた。声のするほうへと向くと、津久葉つくばと水瀬がいた。

「影野、一緒に帰ろうぜ!」

 そう言いながら、津久葉は教室に入ってくる。

「あ、おう」

 俺は戸惑いつつも答えた。水瀬も津久葉の後に続いて教室に入ってくるが、どこか様子がおかしい。そこで俺は気付いてしまった。

 津久葉があまりにも大きな声だったせいか、クラスの奴らのほとんどが俺たちに視線を向けている。俺に話し掛けてくるやつなんて馬鹿だな、とか思っているんだろうか。その印象を抱かせたのは俺の所為せいだ。

 過去に俺はやってはいけない事をしてしまった。それを知る奴が俺と同じクラスにいる。そいつが俺の過去をばらしてしまった。それは噂話のように直ぐに学年に知れ渡ってしまったのだ。な、はずなのに……。


「おい、はる。なにをやってるだよ。行くぞ。影野、悪い。校門で待ってるわ」

 水瀬はそう言うと、津久葉を引き連れていった。津久葉は驚き、少しの抵抗はしていたが、それも虚しく諦めていた。

 津久葉には悪いが、水瀬には後で御礼を言わなくては。俺の今の状況を察してくれて助かった。

 俺は周りを見回す。すると、教室内はいつも通りに戻っていた。それから、俺は黙って教室を出ると、直ぐに校門へと向かった。


 この後、思ってもいない場所に行くことになるとはこの時はまだ知らなかった。

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