17-2(44)
「あの~ どうやって振り分けるんですか?」とごく当たり前の質問を
投げかけると男は平然と答えた。
「お前が強引に決めればイイんだよ、だって1番だろ」
「そう言われても番号が若い順にイイ思い出来るんだから当然ケンカになる
と思うんですけど」
「そうだよ、当然互いの力が拮抗、あっいや、似ていたら喧嘩になるよな。
だからそういう場合はお前がレフリーになって喧嘩で決着させればイイん
だよ」と再び肩を叩かれた。
「でも一応村でケンカは禁止されてるし、最悪オレみたいに牢屋行きって事
になりかねないんでちょっとそのやり方は……」と否定的な意見に対して
男は腕組みし、ため息を吐いた。
「誰がそんなルール作ったんだよ」
「一応住人達の多数決で決まったんだけど提案したのはショ―タって奴
なんだ」
「ショ―タ?」
「そう、そいつ今村長やっててさ、ちゃんとルールが守られてるかどうか
頻繁に村中を巡回してるんだ」と手をクルクル回した。
「そのショ―タって奴、今すぐ呼んでこいよ!」
「それがおかしなことに最近全然見かけないんだ」と不思議そうに首を
傾げるオレに対し男は少し呆れたような表情を浮かべた。
「まったくお前は子供だよな」
「オレが子供って?」
「そうだよ、もう答えは出てるじゃねーか。まぁ、オレが思うに奴はこの
村に見切りをつけたんじゃないかな」
「見切りって?」
「つまり何の進歩もないこの村を捨てたんだよ」とあたかも自分が絶対
正しいかのように男は言い放った。
少なからずショ―タの性格を知るオレは当然男の推論に納得出来るはずも
なく、男との会話に一瞬間が空いたが、すぐさま男は続けた。
「お前さ~ よ~く考えてみなよ。普通何らかの用事で村を出るなら村人
に理由ぐらい伝えるもんだろ、ましてや村長なんだから」
「まぁ、確かにそうだけど……」
すると男は急に立ち上がり視線を上に向けとんでもないことを言い出した。
「お前が村長やれよ!」
「えっ! そ、そんなオレにはムリだよ」
「確かに今までのお前じゃ到底無理だけど今なら可能だぜ」と何か根拠
ありげにオレの胸を指で突っついた。
「実は今回お前達に手伝ってもらうプロジェクトの報酬、つまりご褒美は
全てプレートナンバー1のお前に渡そうと思ってるんだ」
「えっ、オレに?」
「あぁ、そうだよ。お前は自分の取り分を好きなだけ取って残りをナンバー
2に渡すんだ。もう分かると思うがナンバー2も同じことを繰り返し3番
へと順次下げていくんだ」
「でも取り分によっては数字の前後でもめる気がするんですけど」
「お前頭悪いな、だから最初に喧嘩して上下関係を確立しておく必要がある
んだよ、分かった?」
「なるほどそういうことか」と納得するオレに男は更にナンバープレート
の意義を説明し始めた。
「今回のプロジェクトは他の村人に知られるとマズイんで秘密裏に実行する
必要があるんだけどよ、お前らはまだ精神が子供だからつい喋っちまうこと
ってあると思うんだよな。そこでお互い監視するため数字が必要なんだよ」
「あの~ 全然分かんないんですけど」と目が完全に点のオレに男は少し
呆れたような表情で更に続けた。
「つまり6番の奴が怠けたり秘密を漏らさないように前後の5番と7番が
が常に監視するってことだよ。で、もし何か事が起こったら連帯責任を
取ってもらうって仕組みさ」
「はぁ~」とため息交じりのオレに男は肩に腕を廻してきた。
「さっきの話に戻るけどよ、今がお前にとっていいタイミングなんだよ」
と徐々に顔を近づけて来た。
「タイミング……ですか?」
「あぁ、そうだよ。まずリーダーになるには力が必要なんだ。その点、
お前は喧嘩がこの村で一番強い。でもそれだけじゃダメなんだ。次に必要
なのはお前に仕えれば得するっていう構図なんだ」
「それってまさに今回のプロジェクトの報酬システムそのものじゃない
ですか!」
「そっ! お前もちっとは分ってきたな」
「で、更にいいのはショ―タっていう村長がいないんだからやるんだったら
今しかないと思うぜ。お前が本気で村長やるって言うならオレ色々相談に
乗ってやってもイイんだぜ!」
「あ、ありがとうございます! で、でも少し時間下さい」
「まぁいいけど何事もタイミングってこと忘れんなよ!」と男は背中越しに
手を振りゆっくりオレの視界から消えた。
確かにタイミングってのはあるかもな。
もしオレが村長になったら牢屋制度も廃止出来るしあの男のおかげで
もっと村が豊かになる可能性だってあるワケだし、しかもオレが独占出来る
なんてちょっと考えただけでワクワクするもんな、ハハッ!
あっ! うさぎクラブのリカとリンだ。
「よう!」
「あっ、ゲンタ、ずいぶん久しぶりね」
「ところでお前ら最近ショ―タ見たか?」
「そういえばあんまりお店に来なくなったわね」
「お前ら何かショ―タについて知んねーか?」
「私たちが知るワケないじゃん、ね―っ! リンちゃん」
「ちょっとどいてよ、私達これからピクニックなんだから」
「あっ、すまん……」
彼女らと別れ、次期村長の決心を徐々に固めつつあるオレは早速頭の中
で候補となる14名の人選に取り掛かった。
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