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〈ガチャ!〉〈ガチャ!〉〈キィ――ッ!〉
「おっ、まだ生きてたか……」
オーナーはその言葉を最後に何も語らず食事を床にそっと置き、去り
ゆく男の背中を力なく見届ける私には気力も体力も全て尽き果てていた。
もう一週間ほど前からほとんど食事が喉を通らずやせ細り、体重も
以前の半分ほどまで落ち、昔の面影は既になくなってしまっていた。
オーナーが言うには私は重い感染症にかかっているらしく、もう
ほぼ全ての臓器が病原体に侵され、あと10日持つかどうか……、そんな
容態だからなのかかなり前からスカウトが私の代わりを見つけるため町へ
繰り出したらしい。
立っているだけでも辛い私は雑務をようやく免除され、ベッドに横たわり
続け3日が経ったが今日の夕方には私にとってきっと最後のお仕事になる
だろうリハーサルが待っいた。
実は数日後にクラブでマジックショーが予定されているらしく、私がその
アシスタントに選ばれたのだからせめて最後ぐらいは楽しくやり遂げたい
……、そんな私は少しでも体力の消耗を抑えるため仮眠をとることにした。
――
―――
――――
〈ガチャ!〉〈ガチャ!〉〈キィ――ッ!〉
オーナーとマジシャンのおじさんが手押し車に黒い箱のような物体
と束ねられた数十本の剣を乗せこちらに近づいて来た。
「おい! ミカ、起きろ」
私は無言で起き上がり2人にお辞儀した。
「今からマジックのリハーサルするから彼の説明をよ~く聞きなさい」
「はい」
私は力を振り絞りよろめきながらおじさんに近づいた。
「よろしくお願いします」
「あぁ、よろしくな」
私がマジックショーのアシスタントに選ばれたのはマジシャンからの
ご指名で、箱に剣を刺す今回のマジックの特性上箱に入るアシスタントは
出来るだけ身体が小さい方が有利な点、そしてそのことを承諾したオーナー
はもう先がない私ならもしマジックが失敗してもお店側の損失がないという
のがどうも今回の選出理由のようだ。
私は何度も何度も箱に入り、中にあるもう一つの扉を開け、箱の底に
隠れる練習を必死に繰り返すも狭い空間からの息苦しさや病気による
けん怠感や吐き気……、それらに必死に耐え命のカウントダウンと共に
私は夜を徹してひたすら頑張り続けた。
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