6-2(19)

 裏方に回されたおかげでイヤな接客からは解放されたがその分仕事量

が大幅に増え、フロアの掃除から洗濯、洗い場、クラブのヘルプ等、

肉体的負担から最後のヘルプの仕事が終わる早朝には部屋ににたどり着く

のも容易ではないほど私は疲れ果てた毎日を送っていた。

 もう明るい未来も希望もない私にとって唯一の楽しみは全ての仕事を

終えた今、就寝までのわずかな時間だけだ。

 でもそんな私に今日も睡魔は容赦なく襲って来る。

 睡魔は日を追うごとに力をつけると私をいとも簡単に眠りの世界へ

引っ張り込み、再び明日という辛い日常が始まる。


「眠りたくないよ~ 明日なんて来なければいいのに……」


 ……そんな願いが叶うはずもなく私は知らぬ間に眠りについてしまった。



『た、大変! 遅っ刻だっ! チッコック――!』

 

 私は大急ぎで髪をとかす間もなく家を飛び出した。


〈ピョ〉〈ピョ〉〈ピョ〉……


『ゴメン、今日は構ってるヒマないの、遅刻しそうなのよ!』


 私は砂煙を上げながら森を通り抜け、途中川辺に立ち寄り水面に顔を

覗かせくちゃくちゃな髪を整えると再びうさぎクラブを目指し走り出した。

 

『おっはよ――っ! ハァハァ』私は息を切らしながら朝の挨拶をすると

リカちゃんがいきなり近づき私の肩の辺りをまじまじと見つめた。

『な、何よ』

『ミカちゃん、肩に何か白いモノがいっぱい付いてるよ。何なのそれ?

もしかしてそれ鳥のウンチじゃない』

『えっ? ホントだ! ウ、ウンチだ~』

『ミカちゃん、鳥語喋れるんだから直接言えば良かったのに〈やめてよ―〉 

ってね、フフッ!』

『そう、そう!』と奥からリンちゃんがニヤけた表情で現れた。

『何よ、リンちゃん、聞いてたの』

『【基礎鳥語】からやり直した方がイイんじゃない?』

『もう、みんなイジワルね、大っ嫌い!』

『フフッ!』


……

…………


 懐かしい夢から覚めた私はいつもよりちょっぴり嬉しい気分でフロアの

清掃業務に取り掛かった。

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