だってでけぇ虫が

 家の前ででっけぇ虫がずっと交尾してる。助けて。


 武士に追い払ってもらうようお願いしたら、「無粋な……」と軽蔑の目で見られました。人ん家の前で交尾する虫に粋も何もねぇだろ! 頼んだぞ!


 武士は慎重に慎重に虫を追い払っているようだった。自分達の勝手のせいで、この虫達が子孫を残せなくなるのが嫌がったのだろう。別にいいんじゃねぇか? インモラルな虫の遺伝子をここで絶っとくの。

 だがそう伝えると、武士は哀れ極まる目で私を見た。


「……」


 なんか言えよ!!!!


「……」


 ニコ……じゃねぇんだよ! なんか言えって!!!!


 だが無事追い払うことには成功したようだ。武士は生温かな笑みをはりつけたまま、私の肩を叩いた。


「もう、大丈夫だぞ」


 だからどういう感情なんだよ、それは!!

 わからなかったが、とにかく憐れまれているのはわかった。遺憾である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る