軽めの散弾銃みてぇな雨降ったじゃないすか、この間。

 エグい雷とかも鳴ったやつ。ちょうどその時私は仕事で車乗ってたんですけどね、もう銃撃にでも遭ったのかと思いましたもん。襲われた所で胃液ぐらいしか出すもん無いってのに。

 とにかく、その日に判明しました。武士、雷が苦手らしい。


「だって、ぴかっと光るのだぞ」


 家に帰ってご飯が炊けていなかった理由を聞いたところ、奴は神妙に正座して言った。


「空が雷さまによって引き裂かれるのだ。ああ、げに恐ろしきことよ。噂によれば、とある長屋ではその雷に打たれた者すらいたというではないか。もう某、布団にこもるしか逃れる術は無かった」


 ほう、それが今晩我々が唐揚げを白米無しで食べなければならない理由ですか。まあー、そこは糖質ダイエットってことで良しとするとして……。


「……」


 武士は無言で立ち上がると、炊飯器の元へと行った。間も無く、“ピーッ”と炊飯開始の音が聞こえてくる。

 アイツ、多少のタイムラグはものともせずに白米食う気だな。


「そう申す大家殿は怖いものは無いのか?」


 そんで、武士にそんな質問をされた。


 えー、怖いもの?

 ああ、それなら饅頭が怖いよ。あの丸いフォルムがこわいこわい。


「そういうのは良いから」


 良いのか、そうか。

 そうねぇ、前も言ったけど普通に虫とか苦手よ。


「ほほう」


 あとはオバケとか嫌い。


「おばけ」


 うん、オバケ。怖いもの苦手。


「ほうー」


 はい。


「しかし、その割には書き物にてよくアヤカシの話をしとるではないか」


 いや、怖がりの方がホラーは書けると思うよ実際。

 ……や、待て、お前さっきなんつった? 書き物? なんでお前私の書く小説のこと知ってんのよ。まさか読んで――いややめてほんとその先は言わないでマジで。


「餃子も食べたい」


 だから唐揚げの時はやめようって話しただろ! 私もお前も無敵の十代の肉体持ってねぇんだ、それなりにコレステロールとか脂質とか気にしてだな!


「すいすろーる?」


 ロールケーキの話はしてねぇんだよ、この食いしん坊め!! ちったあ私の雷も怖がれ!!


「微弱であるからして」


 人の怒りをマッサージ機みたいに言うな!!!!

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