トカゲ
「大家殿ー! 来てくれーっ!」
買い物に行っていた武士が、息を切らせて帰ってきた。と思ったら、くつろいでいた私の手を引き再び外へと飛び出そうとする。
やめろやめろ! 今私パンツ一丁なんだぞ!
「問題無かろう、階段の下までだ!」
あるよ!!!! ありまくるよ!!!! 住居者の方に半裸見られるとかリスクしか無いわ!!!!
若干の抵抗の結果、無事パジャマ代わりのボロジャージを履く猶予を与えられました。
「思わぬ時間をくってしまった。まだおれば良いが……!」
そして全速力で階段を駆け降りる武士である。つーか、そこまで急いで一体何見せたいのよ。
「! よし、まだおった! 大家殿! これ!」
武士がしゃがみこみ、私に向かって激しく手招きをする。
えー、何々? なんか変なもんでも落ちてたの?
「トカゲが! トカゲに噛みついておる!!」
見ると、一匹のトカゲがもう一匹のトカゲの腹に噛みつき、そのまま二匹でじったんばったんしていた。
どうでもいいよ。
どうでも!! いいよ!!!!
しかし思ったまま素直につっこんだら、ものすごく悲しい顔をされた。
「何故だ。大家殿には、この大自然の織りなす弱肉強食の営みが分からんのか」
そこまででかい話じゃないだろ……。
だが、よく見れば確かになかなか荒っぽく噛みついているものである。なんだろ、縄張り争いとか?
「ふむう、かもしれぬな。見過ごすのも忍びないし、助けてやるか」
そう言って手を伸ばす武士を、急いで片手で制する。
やめといた方がいいんじゃないか? お前曰く大自然の営みのことだし、だったら人間が手を出すべきじゃないと思う。
「だが、このままでは死んでしまうかもしれん」
それもまた大自然の掟。
「むむう」
あとほら、もしかしたら交尾とかかもだし。
「柿ピー?」
交尾だよ。何、お前腹減ってんの?
結局、トカゲはそのままにして部屋に戻りました。
……で、私がご飯作ってる最中に武士が調べてくれたところによると。
「交尾であった」
あわやとんだおじゃま虫になる所だったらしい。へぇー、トカゲの交尾ってあんなんなんだねぇ。
また一つ、賢くなった我々である。
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