パンダがいる

 武士へのクリスマスプレゼントにさ、パンダの部屋着をあげたじゃないすか。

 どうせ家にいるならマッチョ武士より、かわいいふかふかパンダの方がいいかなと思って。


 今、加速度的にパンダが嫌いになっています。


「ぬ、帰ったか大家殿! 見よ! 新たなる年に新たなる舞、その名も“あけおめの舞”!」


 何の捻りもねぇ名前をつけられたケツ振りダンスが、私の目の前で繰り広げられている。そのパンダのケツを軽めに蹴飛ばしておいて、私は手を洗いに洗面台に消えた。


「パンダー!」


 断末魔の悲鳴にすらイライラする。そういうんじゃねぇんだよ、パンダの鳴き声はよ。

 つーかパンダって鳴くのかね?


「おや? 知恵者の大家殿でも知らぬことがあるのか?」


 そりゃ私にだって知らないことぐらいあるよ。……ん? 今の皮肉?


「早速調べるで候」


 そう言うと、武士は私のお下がりのスマートフォンをぽちぽちし始めた。ちょんまげパンダが自在にスマートフォンを操っている姿は、なんかちょっと面白い。

 でもなぁ、あれだ、パンダってクマだろ? じゃあ「ぐおー」とか「がおー」とか言うんじゃないか。


「む、動画を見つけたぞ」


 おー、何て鳴くの?


「メェー」


 嘘つけお前。


「嘘ではござらん。ほら、これ」


 ……あー、ほんとだ。メェッて鳴いてる。え、意外。


「ちなみに赤子は、アアァン! と鳴く」


 それは流石に嘘だろお前……。


 ……。


 ……。





 マジだった。

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