また来年

 大晦日。

 なんだろうな、今年はいつもより静かだった気がする。


「だっはっはっは!」


 いや、武士がうるせぇわ。ガキ使見て大爆笑だもん。

 コイツ笑いの沸点低いんだよな。すぐケラケラ笑うから。


 でもまあ、どんな状況でも笑えるってのはいいことだと思う。どん底の中でも笑えたら、なんだかまだ生きられるって感じするもんな。

 そんなことを、私はチューハイ(クリスマスプレゼント)を飲みながら思っていた。


「大家殿、何を飲んでおるのだ?」


 んー? お酒だよ、お酒。期間限定系の甘いやつ。飲む?


「飲むでござる!」


 ぶわっ、酒くせぇ! 何お前も飲んでんの!?


「芋焼酎」


 いつのまに買ってたのよ……。

 まあいいや。ほれ、かんぱーい。


「乾杯!」


 ――開発者の方の努力が垣間見える美味しくて安いお酒で、時代を超えて出会った我らが日本の片隅でグラスをかち合わせる。

 ボロアパートの床はスケートリンク並に冷たいし、窓の近くとか寄れたもんじゃないけど。そんでも小せぇ炬燵を囲んで、バカ笑いできる相手がいるというのはまあ、悪くないんじゃないかと思う。


「来年もよろしく頼むぞ、大家殿!」


 いや、そこはそろそろ江戸に帰ってくれ。


「ぬぬぅ!」


 そんなわけで、皆さま、良いお年を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る