リスとネコがいる

 シルバニアファミリーが部屋でのさばっている。


 こたつに入ってたり、みかんを狙ってたり、冷蔵庫を開けようとしてたり。

 もちろん自力で動いているはずがない。武士がセッティングしているのだ。


 最初の頃は大目に見ていたが、さすがに私の下着を二匹(リスと猫)がアイロンがけしようとしていたのを見て説教することにした。

 風呂から出たてなのでタオルで頭を拭きつつ、武士を呼ぶ。


「大家殿が心穏やかになると思ってやった。悪気は無かった」


 などと供述しており。


 武士は私の前で正座したまま、けろりとほざいた。


「大家殿はいつも忙しそうだからな。小さき者たちの“さぽうと”も必要かと思ったのだ」


 いらんいらんいらんよ。

 いるにしてもパンツにアイロンかけるヤツいる?

 最も見えない所だよ?


「見えない場所こそ、気合いを入れねばならぬからな」


 前もその理論聞いたな。でもやってるのは実際おままごとだから、別にパンツのしわも伸びてないしね?


 とにかくやめなさい。コイツらやおら小さいから踏んじゃいそうになるんだよ。

 専用の家も買ってやっただろ? ほら、もう帰してやりなさい。


 そう言うと、武士は人形を両手に渋々立ち上がった。


「ではそろそろ眠る時間だぞ、どんぐり殿、にぼし殿」


 名前ついてた。

 リスがどんぐりだったから、猫がにぼしだろうな。


 あと、最近ハンカチが一枚無くなったと思ってたら、彼らの家にハンモックができていた。

 我が子ができたような手のかけっぷりである。まあ本人が幸せならそれでいいのだが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る