第20話 炎のライバル

 それからあっという間に一ヶ月の時が過ぎた。アリスティーの一同は、ライラの所に足繁く通い、歌い方のレッスンを受けた。そのお陰で、アリスティーの歌唱力は一段上にレベルアップしていた。

 やるべきことをやり終え、アリスティー一同は、県民スタジアムへと向う。知事選のフェスに出場するために。


 愛理が受付を終えると、その前に、エレメンタリーズのサラマンディーが立ち塞がるように仁王立ちしていた。


「来たか、アリスティー。勝負だ!」


 サラマンディーは燃えていた。その情熱は、火の精霊らしく燃え盛っている。


「受けて立つわ。勝負よ、エレメンタリーズ!」


 愛理はサラマンディーを指差し、声を大にして宣戦布告をした。


「そうこなくっちゃな。そうでなきゃ、ライバルとは言えないぜ」


 サラマンディーはそう口にし、愛理に手を振り、踵を返し去って行った。


 彼女の燃えるような闘志に、愛理は冷静に立ち振る舞ったつもりであったが、ふと気付けば、手のひらに汗をかいていた。サラマンディーが発する熱にあてられていたのだ。

 愛理が拳をきつく握りしめると、観客がワッと沸いた。


 知事選でのトップバッターのアイドルが歌い始めいたのだ。結局、この知事選のフェスに立候補したのは、3組のアイドルだけであった。他のアイドル達は、エレメンタリーズとアリスティーの実力を恐れ、立候補を避けた。

 今、ステージの上にいるアイドルも実力はあるのだが、エレメンタリーズとアリスティーの敵ではなかった。事実上、エレメンタリーズとアリスティーとの一騎討ちである。戦いの幕は、開いたのだ。


 トップバッターのアイドルが歌い終わり、ステージの袖に降りた。次は、いよいよエレメンタリーズの出番である。


「いくよー、皆」


 シルフィーがスタンドに向かい、声を出す。


「イエーーーー!」


 スタジアムいる観客が一斉に声を上げる。


「『森の囁き、水の囁き』いくぜ!」


 サラマンディーはシャウトする。そして、彼女はディストーションの効いたギターを鳴らす。ハードロックっぽい曲に、俄然、スタンドはヒートアップ。

 サラマンディーが手をかざすと、ステージ前面が閃光に包まれた。そこには、花火が置かれてあり、サラマンディーが発した炎で、着火したのだ。

 ド派手な演出にうおおおおおおと観客は叫ぶ。


 間髪入れず、ウェンディーが水を呼び寄せ、水柱を出す。そして、ノームが地面を揺らした。

 スタンドの縦揺れに合わせ、ヘッドバンキングするエレメンタリーズのファン。

 圧倒的。まさに圧倒的なステージパフォーマンス。エレメンタリーズのステージは、見る者全てを突き動かした。


 そのステージを、愛理はステージの袖から見ていた。これだけのステージパフォーマンスを見せつけられても、その心は揺れない。

 彼女の心は、波のない湖畔のようであった。その水面は、決して揺れることがない。

 勝てるかどうかなど、今の彼女には分からなかった。けれど、確固とした揺らぎのない自信だけが胸中にある。


 サラマンディーが、最後のフレーズをかき鳴らし、演奏は終わった。


「みんなー。どうもありがとう!」


 サラマンディーが叫ぶ。ドワアァァと大声を出すエレメンタリーズのファン。演奏が終わっても、観客の熱は留まることを知らず、沸き上がる。スタジアムは揺れていた。2万の満員の観客は、まだ揺れ動いる。


 サラマンディーは歓声を背に受け、ステージを降りる。ステージの袖で、サラマンディーと愛理はすれ違う。

 どうだ! と言わんばかりのサラマンディー。

 それに対し、何も告げなかった愛理。


 サラマンディーが立ち去ってから、愛理は美砂と朋世に目線を向ける。


「行こう、リーダー!」

「アリスティー、ゴーですニャ」


 二人の言葉を受け、ゆっくりと歩み出す愛理。

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