JKアイドルは異世界で成り上がる(改稿版)

ラミエル

前章

第1話 譲れない二人のアイドル

 トレビック国最大のスタジアム、首都にあるフェラガモ・アリーナ。その収容人数は実に8万人。

 円形アリーナであり、かえってそれが古代ローマのコロッセオにも似た雰囲気を醸し出している。


 そう、このアリーナは、正にコロッセオと化した。

 ただし、互いに持つのは、剣闘士の剣ではなく、マイクなのだが。


 そこで対峙するは、アリスティーとバニラホイップ。宿敵の二人、杉野愛理と鳥谷望。剣を歌という武器に替え、これからアイドル対決という死闘が行われる。


 かつて、愛理はアイドルの先輩として、鳥谷を尊敬していた。また、鳥谷も愛理を可愛い妹分として、扱っていた。

 愛理が率いるアリスティーは、鳥谷のアイドルグループ「バニラホイップ」の背中をずっと追いかけてきた。


 そして、なんの因果なのだろうか、そのアイドルグループは、8万の大観衆を前にして、競い合うことになったのだ。


 トレビック国の首都フェラガモ。そこにある円形のフェラガモ・アリーナ。

 そこにどんどんどんどんと人が吸い寄せられていく。そのファン達は、待ち望んでいた。アリスティーとバニラホイップの死闘の行方を。


 この決着の行方がどうなるのかは、悪戯好きな運命の女神でも推し量ることは出来ない。


 会場がフェス開催時刻に近づくつれ、熱気で膨張していく。その熱は、観客席を伝って、アリーナの控え室のある廊下へと突き抜けていく。

 そこで、愛理と鳥谷が鉢合わせ。

 ファンの熱に当てられたのか、愛理の頬はやや蒸気していた。


「鳥谷さん、私負けません。バニラホイップを倒し、私がトレビック国の大統領になります!」

「あら、偶然ね。私も負ける気がしないのだけれども。あの子羊同然だったアリスティーがここまで来るなんてねぇ……」


 鳥谷はやや俯く。そして、声を張った。その迫力は猛獣の咆哮のようであった。


「やれるものなら、やってみなさいよ、アリスティー! 貴方達の全力をぶつけて来なさい。さもないと」

「さもないと?」

「ただ、私達バニラホイップの餌になるだけよ」


 愛理はフッと笑みを漏らす。大胆不敵な笑みであった。


「当然、私達の全力をぶつけていきます。それを受け取って下さい、鳥谷さん」

「そうでなくちゃ、話にもならないわ」


 二人のぶつかり合う視線から、火花が散っていた。

 鳥谷が余裕綽々といったかんじで、愛理から視線を切り、バニラホイップの控え室へと歩いていった。

 愛理もアリスティーの控え室へと歩んでいく。


 互いに友好の握手などしなかった。そうなのだ。これから、鍔迫り合いを相手同士――敵同士となるのだから。


 トレビック国の中のアイドル頂上決戦が始まるのは、事実であるが、ここに至るまで様々なことがあった。

 取り分け、日本では埋もれていた存在だったアイドルのアリスティーが、ついには大統領アイドルとのアイドル対決するまでに至った経緯を語らねばならない。


 まずは、アリスティーのことを。

 アリスティーが日本からこの異世界に来たことから、紐解いていかねばならぬだろう。

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